J2札幌がベトナム代表FWレ・コン・ビン(28)と今季の契約を結ばないことが6日、決まった。昨年12月の時点でビン本人は札幌でのプレー続行を希望。クラブでは所属元のベトナム1部ソンラム・ゲアンと完全移籍での獲得を目指し交渉を続けてきた。クラブ間では合意に達していたが、4日にビンが、一方的にゲアン残留を明言。札幌は、この日までに代理人を通じ本人の翻意を確認し、交渉を打ち切った。

 ベトナムの英雄が、わずか4カ月で札幌を去ることになった。ビンは4日に、現地でゲアンのユニホーム発表会見に登場し、背番号9のユニホームを持ち「今季はゲアンでプレーする」と発言。札幌側には何の連絡もなかったため、代理人を通じて状況を確認し、行動も発言も本人の意思であると判断した。三上大勝GM(42)は「ビンは今季、ベトナムでプレーすることが決まった。それが本人の意思だった」と話した。

 想定外の結末だった。昨季はベトナム人初のJリーガーとしてリーグ戦9試合で2得点。東南アジアからの観客増や現地企業の新規スポンサー獲得にも貢献した。今季も戦力としてはもちろん、営業面のキーマンとして期待していたが、12月末まで「札幌でプレーを続けたい」と希望していたビンの突然の翻意で、獲得を断念せざるをえなくなった。

 ビンの意思を信じた札幌は、移籍を固辞していたゲアンとのクラブ間交渉に全力を注いできた。相手側が要求する完全移籍に代える3000万円前後の資金も準備。札幌の仕事納めだった12月27日時点では、調印を残すだけだった。ビン本人とも年明けに発表することで合意していた。事態急転に、三上GMは「相手クラブの誰が何を言っても移籍を止められない条件にしていたが、最後はビンの判断。信頼関係を再び築くのは難しいし、再び獲得に動くことはない」と話した。

 衝撃のビン退団。それでもクラブとしての東南アジア戦略は継続する。同GMは「ベトナムか他の国になるか分からないが、道や札幌市、企業、団体などを手伝えることは、引き続きやっていきたい」と説明した。