仙台は9日、グラハム・アーノルド監督(50)の退任と渡辺晋ヘッドコーチ(40)の監督就任を発表した。仙台での選手経験者が指揮を執るのはクラブ初。若き新指揮官は会見で「立て直す自信はある」と現在リーグ17位で公式戦8試合勝ちなしの苦境を救う決意を語った。

 ベガルタを最もよく知る男に、再建が託された。現役時代の01年から在籍14年目。クラブワーストのリーグ開幕6戦勝ちなしという状況で、自身初の監督就任を決意した。S級ライセンス取得からわずか2カ月での打診にも「この状況から逃げ出すわけにはいかないし、クラブの現状や選手、サポーターの心境を私以上に理解している指導者はいない。立て直す自信はある」。ヘッドコーチとして低迷を招いた責任も重く受け止め、仙台を救うために迷いはなかった。

 渡辺新監督のもとで行われた初練習は、すべてが変わっていた。08年から現U-21日本代表の手倉森監督らを支えてきたコーチ時代と同じように「気がついたら一緒に走っていた」と選手とのランニングからスタート。メニューは「自分の色を出していきたい」と新指揮官が掲げる、攻守の切り替えのスピードを重視した。今季見失っていた最大の武器を取り戻すため、初日から積極的に動いた。

 立場は変わっても、自分のスタイルは貫く。コーチ時代から頼れる兄貴分として慕われてきたが「接し方は基本的に変えるつもりはないし、さらに密にしたい」と選手の自信回復のためにも対話重視を強調した。前監督は許可しなかった居残り練習も“解禁”し、最後まで見守った。選手たちが「去年までに戻った感じがするし、何かを変えないとという意志が表れていた」と口をそろえるように、雰囲気は明るくなった。

 改善すべき課題は山ほどある。それでも、J1最年少監督は「まだ28試合ある。下を向く必要はない。のし上がっていけると確信している」と力強く言った。新生渡辺ベガルタが逆境に立ち向かう。【鹿野雄太】