<J1:川崎F4-1鹿島>◇第13節◇10日◇等々力

 川崎Fの日本代表候補FW大久保嘉人(31)が、サプライズ選出を引き寄せるマルチゴールを決めた。2-1の後半38分、相手のミスから抜けだしGKとの1対1を決めると、44分にも2点目。明日12日のW杯ブラジル大会メンバー発表前としては最後のリーグ戦で、判断力と速さを兼ね備えたFWのお手本とも言うべきゴールを決めた。あとは、吉報を待つだけだ。

 これぞFWの真骨頂だ。後半38分、相手のミスから生まれたMF中村のスルーパス。これを受けた大久保は、足元のボールだけ見つめながらドリブルで駆け上がり、冷静に右足でゴールを決めた。「大事に大事に行ってるのがバレバレだったけどね。緊張した。入ってホッとした」。公式戦4試合ぶりの得点に「良かった、良かった」と何度もつぶやいた。

 44分には、鹿島MF柴崎のパスをFW小林がカットし、再び相手の守備の裏に抜けだした大久保へ。これも追いすがる相手DFとGKのプレッシャーに動じず、落ち着いて右足で押し込んだ。今季2度目の1試合2ゴールで、8得点目。同じ1トップの日本代表候補FW豊田(7点)を抜き去った。

 1点目は、GK西部のロングボールを相手DF植田がクリアミス。これを中村がダイレクトで前へ通した時、すでに大久保はオフサイドラインぎりぎりの前線に陣取っていた。スピードと正確なキックに加え、アシスト名人の中村の位置を見逃さない視野の広さと判断力は、三十路(みそじ)を過ぎても研ぎ澄まされている。W杯を戦うザックジャパンの力になるだろう。大久保も「今代表に選ばれればやれる自信はある。楽勝でしょ。4年前(南アフリカ大会)はよく選ばれたと思う。今思うと恥ずかしい」と成長を実感する。

 W杯メンバーが発表される明日12日は、昨年他界した父克博さん(享年61)の一周忌。今日11日に地元福岡で墓参りするため、試合後に羽田空港に向かった。「得点することで良いアピールになったと思うけど、選手は何もできないので、待つだけ。選ばれなくて当然、選ばれてサプライズだけど、今は楽しみの方が強いね」。やれることはやった。あとは運命の瞬間を待つだけだ。【由本裕貴】

 ◆マルチゴール

 川崎F大久保が今季2度目の1試合2ゴール。1試合複数得点の回数は自身J1通算27回目となり、FW中山雅史(磐田)の通算33回に次いで歴代単独2位に浮上した。通算26回でFWウェズレイ(名古屋など)と並んでいた。

 ◆98年と02年の代表メンバー選出

 98年大会は大会前のスイス合宿で25人を選出し、そこから本大会登録22人に絞り込む方式。02年大会は5月17日にメンバーが発表されたが、リーグ戦は4月21日の段階で中断。代表の活動期間が長く、選考の判断はJリーグよりAマッチだった。<主な滑り込み選出>

 ◆矢野貴章(新潟)

 10年南アフリカ大会でサプライズ選出の矢野は、メンバー発表直前の5月8日清水戦でのプレーが光った。後半だけでシュート10本、CK8本の猛攻に、FWながら自陣ゴールで長身を生かした守備に奔走。岡田監督の「豊富な運動量、フィジカルの強さ、その高さはセットプレー時の守備で生きる」の選出理由通りの働きを見せた。

 ◆巻誠一郎(千葉)

 ジーコ監督が視察した最後の一戦でアピール。06年大会のメンバー発表直前の5月6日の横浜戦は横浜FW久保との代表FW対決だった。試合は1-1、巻は先発フル出場で体調の良さをアピール。久保は途中出場でシュート0。巻は選ばれ、久保は落選した。