J1で12位に低迷する清水が30日、ユース監督でOBの大榎克己氏(49)の新監督就任を発表した。成績不振により、今季就任4年目を迎えたアフシン・ゴトビ監督(50)を解任。91年に清水初のプロ選手として契約を結ぶなど、草創期から清水一筋の“レジェンド”が、チーム再建に乗り出すことになった。この日、本格始動し、8月2日のアウェー東京戦(味スタ)が新体制初戦になる。

 待望の「大榎エスパルス」の幕が開いた。午後2時からの会見。新指揮官は「自分にとって夢のようなエスパルスの監督というお仕事を頂いたので、全身全霊をささげていきます」。強い口調で決意を表明した。

 レジェンドの登場に、三保グラウンドを包んでいたここ数週間の重苦しい雰囲気が一変した。午前9時過ぎに始まった練習には、平日にもかかわらず300人近いサポーターが駆けつけ、練習場は期待感に満ちあふれていた。周囲の思いに応えるように、大榎監督の指導も時間の経過とともに熱を帯びていった。実戦形式の練習では真剣な表情で選手の動きを確認し、時には身ぶり手ぶりを交えて直接指導。初日から精力的に動くと「期待の大きさを感じた。その思いを忘れずにやってきたい」と話した。

 クラブ愛が、就任へと突き動かした。大榎監督は91年、清水初のプロ選手として契約。Jリーグが開幕した93年以降も清水一筋でプレーしてきた。引退後、早大監督など務める中、J2の複数クラブから監督就任のオファーを受けたこともあった。それでも「スタートはエスパルスという決意があった」と断った。

 前日29日に就任の打診を受けた。チームは12位と低迷する上にシーズン途中での指揮という難しさ。加えて契約年数も年俸も未定のまま。それでも危機を救うことが最優先だった。FW大前は「こういう状況で就任してくれたことを感謝しないといけない。監督のためにも、1試合でも早い勝利が必要」と意気込む。

 2日の東京戦で初陣を迎える。「このチームを絶対にJ2に落としてはいけないという強い気持ちがある」。新指揮官の熱い思いの下、清水が新たな1歩を踏み出す。【前田和哉】

 ◆大榎克己(おおえのき・かつみ)1965年(昭40)4月3日、静岡県生まれ。清水FCから両河内中を経て清水東に進学し、高校選手権優勝、準優勝。早大からヤマハ発動機(現磐田)に進み、91年に結成された清水入りした。96年ナビスコ杯、99年リーグ第2ステージ優勝などに貢献した。02年に引退し、04年から早大監督就任。08年に母校を大学選手権優勝に導き、同年から清水ユース監督。

 ◆清水の最近の低迷

 FW岡崎、MF藤本ら主力だった選手がそろって移籍した11年以降は10位前後をさまよっている。首位に立ったのは10年の第17節が最後。93年のJリーグ創設時から22年間J1に在籍し、鹿島、横浜、名古屋とともにJ2に1度も降格していないが、そのうちリーグ年間優勝の経験がないのは清水だけ。クラブの過去最高順位は第2ステージを制し年間2位となった99年。