クロアチアが独立28年目で初の決勝進出を果たした。イングランドに延長後半4分、FWマリオ・マンジュキッチ(32=ユベントス)の決勝ゴールで2-1と逆転勝ち。決勝トーナメント1回戦から3試合連続の延長戦という厳しい戦いを乗り越えた。15日(日本時間16日)の決勝では、98年フランス大会準決勝で敗れたフランスと対戦する。

 選手は歓喜のピッチを離れようとはしなかった。初の決勝進出を告げる笛が鳴ると、せきを切ったように全員がベンチから飛び出した。3試合連続で延長戦を戦っての決勝進出は史上初、FIFAランク20位は同ランクが導入されてから最も低い順位だ。決勝点のマンジュキッチは「奇跡だ。我々はライオンのように戦った」と胸を張った。

 連戦のダメージはあった。序盤からパスの精度は低く、受け手も追いつけずにラインを割って相手ボールになることも少なくなかった。イングランドの快足FWスターリングにかき回され、さらに消耗した。運動量豊富な司令塔MFモドリッチでさえ、延長に入る前からプレー中に両膝に手をつく場面もあった。いつ集中の糸が切れてもおかしくない状況だった。

 それでもクロアチアの団結心は固かった。マンジュキッチら中心選手が、味方のミスにもサムアップのポーズで激励。開始5分で先制されたが、後半23分にペリシッチの“跳び蹴り弾”で同点にすると、無尽蔵のスタミナを発揮し、延長後半4分にマンジュキッチのゴールで競り勝った。

 90分間、交代は1人もなし。モドリッチは戦前に英メディアがイングランド有利と報道したのをみて「『誰が疲れているのか、見せてやろうぜ』と発奮させてもらったよ」とチームの気持ちを代弁。その言葉通り走り抜いた。MFブロゾビッチの走行距離は16・399キロ。今大会最長だった。

 ダリッチ監督は言った。「決してあきらめない。それが我々の国民性だ」。人口わずか450万人は福岡県にも満たない。そんな小さな国から選ばれた22人は“不屈の心”を見せた。試合後、チーム全員で手をつなぎ、サポーターの前で8回、夜空へ突き上げた。新たな歴史をつくった120分は、国の誇りを示した。

 決勝まで中4日のフランスに対し、クロアチアは1日短い。さらに時間にして90分、丸1試合分多く戦っている。それでも指揮官は「歴史をつくった。だがこれが最後ではない。もう1試合ある。神が望めば、世界一になれる」と力強い。フランスには、過去最高の3位に入った98年大会の準決勝で敗れている。雪辱の1勝が、クロアチアにとって史上最高の瞬間になる。【岡崎悠利】

 ▼クロアチアの記録メモ 決勝進出は同国初で、史上13チーム目。東欧の国としては62年大会のチェコスロバキア(準優勝)以来。W杯で3試合連続の延長戦は、90年大会のイングランド以来2度目だが、イングランドは準決勝でPK戦で西ドイツに敗れており、3戦連続で延長を戦っての決勝進出は初。また、同一大会の決勝トーナメント3試合で、全てリードを許した状況で負けなかったのも初。クロアチアのFIFAランキングは20位で、93年8月に制度が導入されてからは最も低い順位の決勝進出。過去最低順位は98年大会のフランス(優勝)で18位。