日本ではスポーツ選手や芸能人が政治的発言をするとたたかれる傾向にあるように思う。

しかし彼らも一市民。自分の生活に関わってくる政治について発言したり、行動したりする権利は間違いなくある。

近頃、リバプールのユルゲン・クロップ監督(51)が英BBCスポーツのインタビューでブレグジット(英国の欧州連合からの離脱)について発言して話題となっている。同監督はドイツ人として英国内で働いており、英国人自身が発言するのとはちょっとニュアンスが違うかもしれない。だが、ブレグジットについて「もっともなことを言っている」と英国人からも称賛の声が上がっている。

クロップ監督のインタビューでの発言は次のとおり。

「ブレグジットについてはだれも専門家ではないように見える。みんながそれについて話しているのに、だれも解決策を持っていない」

「歴史的に見ても孤立することは、グループでいるよりも立場を弱くする」

「私は51歳で戦争を経験したことはない。だから我々の世代は恵まれていると思う。しかし(戦争があった)過去が教えてくれるのは、パートナーが強力に結び付いていたときの方がヨーロッパは安全な場所だったということ」

「我々は素晴らしい環境で暮らしている。問題はあっても、それは解決できる」

「再び(ヨーロッパが)分裂するのは好ましくない」

「私はまだ最後には常識的な判断が下されるという望みを捨てていない」

クロップ監督はもともとブレグジットには批判的だったが、あらためて反対の意を表明した形となった。これに対し、SNSなどでは「(リバプールの宿敵)エバートンファンの私からしたらクロップ監督に同意するのはしゃくだが、彼はまったくもって正しい。フットボールの監督としては間違った判断をしてほしいが」「『スポーツ選手はスポーツのことだけ気にしてろ』みたいな声もあるが、政治家も彼らの論理的な発言に耳をかたむけた方がいい」などの声が上がった。

結果的に英国がどういう方向へ向かうかはまだまだ不透明。だが筆者はスポーツ選手だろうが芸能人であろうが、だれでも気軽に政治的発言ができる環境こそが素晴らしいと思う。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)