デンマーク代表MFクリスティアン・エリクセン(29=インテル・ミラノ)に最悪の事態が起こらず、本当に良かった。心からホッとした。

12日の欧州選手権1次リーグ、デンマーク-フィンランド戦。エリクセンは前半終了間際にスローイングのボールを受けようと、タッチラインに向かって近づいていった際、意識を失って転倒。オランダのチームドクター、ボーセン医師によると、一時的に心停止状態に陥っていたという。

だが幸いにも、周りにいた選手たちや、メディカルスタッフの迅速な対応で同MFの命は救われた。止まってしまっていたエリクセンの心臓は、除細動器を1回使っただけで再び動きだした。そして病院へ向かう前の、スタジアムの中で意識も取り戻した。

現在、コペンハーゲン市内の病院で、さらなる検査が行われているところ。サッカー選手として再びピッチに立つのはいつなのか、それは可能なのかというところはまだ不明だ。だがデンマークのユルマン監督が言っていたように、彼らもサッカー選手である以前に、家族を持つ1人の人間。一番大切なのは生きていることだ。エリクセンが今大会から去らなければならないとしたら残念ではあるが、筆者としてはそれ以上に奇跡的に生きていてくれて本当に良かったという気持ちの方が何倍も強い。

今回の一件で、サッカー界の温かい結び付きを強く感じることができた。エリクセンが倒れた直後から多くのクラブ、選手たちがSNSに「My thoughts are with Christian and his family(私の心はクリスティアンと彼の家族とともにある)」などと書き込んでエリクセンの無事を祈った。関係者だけでなく、ファンからも多くの励ましの声が集まった。入院中のエリクセンにとっても、これらの声が大きな後押しになるに違いない。

サッカー選手は1試合90分間で、だいたい10キロ前後を走っている。シーズン中は1週間に1、2試合のペースでこれが続くのだ。スポーツが健康に良いというのは我々一般人レベルの話であって、プロ選手の体には相当な負担がかかっている。トットナム時代にエリクセンのメディカルチェックを行っていたという医師によると、これまでの検査で同MFの心臓には何の問題も見つかっていなかったという。そんな選手であっても、突然このようなことが起きるのだ。

日本の、たとえ少年サッカーのレベルでも、同様の事象にどう対処するのか、日ごろからシミュレーションしておくことが大事だ。そうすることが、1人の人間の命を救うことにつながるのだ。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)