先日、セリエAが来季22-23年シーズンから、緑色一色のユニホームの使用を禁じると発表した。現在、緑に黒のラインが入ったユニホームを着用しているサッスオロは大丈夫なのか? などと話題となった。

テレビやスタジアムの観客席から試合を見る際、ピッチの芝の色とユニホームが重なってしまい、見にくくなるのを防ぐというのが1番の理由だという。ただユニホームの色やデザインは一朝一夕に決まったものではなく、すぐに変更するのはなかなか難しいため、来季からのルール導入となった。

例えば、Jリーグで東京ヴェルディや松本山雅の試合を観戦する時、選手たちの動きが見にくいと感じることはそれほどないかもしれない。だが、色覚障がいを持つ人にとっては話が違ってくる。日本で色覚障がいを持つ人の割合は、男性で5%(20人に1人)、女性で0・2%(500人に1人)と言われている。欧州ではもっと多く、英国では男性12人に1人、女性は200人に1人が色覚障がいだという。少数派として無視できない数字だと言える。

英BBC電子版によると、サッカー選手自身が色覚障がいの場合もある。ノッティンガム・フォレストやウィガン、クイーンズパークなどでプレーしたDFジェームズ・パーチ(35)もその1人。白地に黒の縦じまが入ったユニホームのニューカッスル時代、サンダーランド戦は特に苦労したという。サンダーランドは白地に赤の縦じまが入ったユニホームだが、パーチは「瞬間的に顔を上げてパスをしなければならない時が1番難しかった」と話している。

人々は(1)色相(赤や青、緑、黄といったいわゆる色)(2)彩度(鮮やかさの度合い=白、黒が混ざった色ほど彩度が低く、白、黒が混ざらない色ほど彩度が高い)(3)明度(明るさの度合い=明度が高いほど白に近くなり、明度が低くなるほど黒に近づく)で色を区別している。色覚障がいを持つ人々は(3)で区別することが多く、濃い赤はほとんど黒に見えてしまうことから、パーチのような状況が生まれる。

個人的にはセリエAの緑色禁止のルール導入は、色覚障がいの人々にも配慮しており、とても良いことだと感じる。一方で、ルールが設定されるからといって、緑がチームカラーのクラブが来季から完全に別の色のユニホームを着る必要もないと思う。色覚障がいの方々の意見も聞きながら、明度の違う色(例えば白など)の太いストライプを入れたり、視認性を上げる方法を模索していくべきだろう。すべての人々が快適にサッカーを観戦し、感動、興奮を共有できるようになるのはとても素晴らしいことだ。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)