涙ながらにバルセロナ退団会見に臨むメッシ(ロイター)
涙ながらにバルセロナ退団会見に臨むメッシ(ロイター)

先週、欧州サッカー界は揺れに揺れた。今年6月でバルセロナとの契約が満了していたアルゼンチン代表FWリオネル・メッシ(34)がクラブとの再契約を断念。退団することが決まったのだ。

以前からスペインリーグのテバス会長はバルセロナに対して何度も警告を発していた。リーグが定めるサラリーキャップ(年俸総額)を下回らなければ、メッシと再契約しても今季選手登録ができないと。ただクラブもメッシ本人もファンも、心のどこかで「何か救済策があるのではないか」と甘く考えていたところがあったと思う。実際、メッシとバルセロナの間では新たな5年契約で合意し、発表の準備もできていた。

スペインリーグのサラリーキャップはクラブに対して健全経営を求めるためのもの。経営上の赤字が大きいクラブは年俸総額を低く抑えられる。12億ユーロ(約1560億円)もの負債を抱えるバルセロナは年俸総額を年々縮小されており、英デーリーメール電子版よると、今季は1億6000万ユーロ(約208億円)程度になる見通しだという。

メッシはこれまで年俸換算で年間約180億円もの大金をもらっていたという。新たな契約では50%の減俸をのんだと本人が明言しているが、それでもクラブの年俸総額を約200億円に留めるには高額すぎる。現時点ではメッシだけでなく、アグエロら他の新加入選手が登録できない事態にもなりかねないため、メッシとクラブの再契約は見送られることになった。

8日にバルセロナの退団会見を行ったメッシ(ロイター)
8日にバルセロナの退団会見を行ったメッシ(ロイター)

少し前置きが長くなってしまったが、メッシのバルセロナ退団が決まった瞬間から、次の移籍先はフランス1部パリ・サンジェルマンしかないと思っている(もし間違っていたらすいません)。欧州各メディアも「年俸3500万ユーロ(約45億5000万円)~4000万ユーロ(約52億円)の3年契約もしくは2年+1年の契約延長オプション」で合意間近と報じており、おそらくそうなるのではないだろうか。

だがメッシがパリSGへ行くことを筆者が確信している理由は、金銭的なことやチームにネイマールやディマリアら友人が多いといったことだけではない。パリSGのオーナーは、アルケライフィ会長をトップとする“半国営企業”の「カタール・スポーツ・インベストメント(QSI)」。11年のクラブ買収には、当時カタール投資庁の会長だった現在のタミム首長も大きく関わっており、クラブには国の意向が大きく反映されているとみていいだろう。

来年22年にはワールドカップ(W杯)カタール大会が開催される。このタイミングでメッシが“カタール傘下の”パリSG所属となれば、W杯を絡めたさまざまなビジネス展開が考えられる。その上、将来的にも“アンバサダー”のような形で、サッカーを始めとするスポーツ文化を同国にさらに根付かせる一翼を担ってもらうことも可能だ。

カタールという国はこれまでコロナ禍でもアジア・チャンピオンズリーグやクラブW杯などを次々に成功させてきた。さらに今年11月開幕のアラブ杯、来年のW杯へ向けた準備も見事までに順調だ。計画的に、さらに根回し等も万全に、物事を遂行する能力にたけた国だけに、メッシ獲得も失敗はあり得ないのではないだろうか。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)

8日、バルセロナ退団会見に臨んだメッシ(ロイター)
8日、バルセロナ退団会見に臨んだメッシ(ロイター)