痛めている右ふくらはぎの状態が心配だが、日本代表DF冨安健洋(23)のアーセナルでのプレーぶりに文句をつける人はあまりいないだろう。

今季ここまでリーグ戦16試合に出場(すべて先発)し、その間チームは10勝2分け4敗。アーセナルはここ数年の低迷期を脱した感すらある。冨安を加えた守備陣は安定し、前線ではサカやマルティネッリ、スミスロウら若手がいきいきと躍動している。

そんなアーセナルだが、当初は右サイドバックとして冨安ではなく、バルセロナからトットナムに加わったブラジル代表DFエメルソン・ロイヤル(23)の獲得を目指していた。

アーセナルのテクニカル・ディレクターを務めるエドゥ氏は昨年夏の移籍市場でエメルソンを獲得するため、バルセロナと交渉を行っていた。だが英ミラー電子版によると、それに異を唱え、冨安獲得へ方向性を変えさせたのがアルテタ監督だったという。

アルテタ監督は長期的なクラブ強化のために「有名で高額な」エメルソンではなく「安価で無名でも実力のある」冨安を推薦。結果的に夏の移籍市場最終日となった昨年8月31日に移籍金約1670万ポンド(約26億9000万円)で冨安を獲得することに成功した。

ちなみにここまでリーグ戦14試合に出場(先発13試合)しているエメルソン獲得に際してトットナムがバルセロナに支払った移籍金は2250万ポンド(約36億3000万円)。アーセナルは約10億円も安い価格で、質の高い右サイドバックを手に入れたことになる。冨安の活躍に目を細めるアルテタ監督のうれしさは相当なものだろう。

もちろん冨安のけががこのまま長引き、一方のエメルソンがプレミアリーグ後半戦で爆発的な活躍を見せる可能性はある。それでも今季ここまではアルテタ監督の思惑どおりにチーム強化ができているのではないだろうか。

アーセナルは今後、20日にイングランド・リーグ杯準決勝第2戦・リバプール戦、23日にリーグ戦・バーンリー戦と試合が続く。早く冨安のプレーが見たいと願う一方で、その後もみすえてしっかりけがを治して欲しいとも思う。いずれにしてもリバプール南野とともに世界最高峰のリーグで世界最高の選手たちとしのぎを削る姿には、本当に心打たれるものがある。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)