米女子プロサッカーリーグNWSLノースカロライナ・カレッジのDFジェイリーン・ダニエルズ(29)が、7月29日のスピリット戦でLGBTQ(性的少数者)支援のためのユニホームを着てプレーすることを拒否し、メンバー外となった。チームの広報担当者は「彼女の選択には落胆しているが、判断の権利を尊重する」と述べた。

この文章だけを読むと、ダニエルズがとんでもない人間なのではと思うかもしれない。だが事はそう単純ではない。ダニエルズは敬虔(けいけん)なキリスト教徒で、2017年には同様の理由から米国代表への招集も辞退したことがあるという。またダニエルズは15年に米国で同性婚が合法化された際には「この世界は神から遠く、遠く落ちていっている。信者にできることは祈り続けることだけ」とツイートしている。

筆者の個人的な感覚からすればLGBTQを支援することはとても大事なことだ。性的マイノリティーを含めて、すべての人々が何の問題もなく日々の生活を送ってほしい。一方でそれを拒否する人々の中には、宗教的な理由からLGBTQの存在を認められない人々もいる。彼らにとってはLGBTQに反対することこそが「正しい」ことなのだ。

ダニエルズ以外にもLGBTQを認めていない(と思われる)サッカー選手はいる。最近まで日本ツアーのために来日していたパリ・サンジェルマンのセネガル代表MFイドリッサ・ゲイエ(32)は今年5月14日のモンペリエ戦を欠場した。

パリSGの選手たちは3日後の「国際反ホモフォビア(同性愛嫌悪)・トランスフォビア(トランスジェンダー嫌悪)・バイフォビア(バイセクシュアル嫌悪)の日」にちなみ、多様性を意味する虹色で背番号が描かれた特別ユニホームを着用してプレーした。

当時のポチェッティーノ監督はモンペリエ戦後「ゲイエは個人的な理由で欠場した。けがではない」とだけ説明したが、ゲイエのセネガル代表でのチームメート、シェイフ・クヤテ(クリスタルパレス)、イスマイラ・サール(ワトフォード)はSNSを通じてゲイエ支持を表明。クヤテはゲイエについて「真の男だ」と記した。

英デーリーメール紙電子版によると、ゲイエは敬虔(けいけん)なイスラム教徒。母国セネガルでは同性愛は禁錮5年の刑になることもあり、同性婚も認められていないという。セネガルの首都ダカールでは今年2月、LGBTQに対してより重い処罰を与えるように求めるイスラム原理主義グループによる集会が行われ、数千人の人々が集まった。

このようにLGBTQに対する考え方については、サポートする側も反対する側も「自分たちが正しい」という信念を持っているだけに、両者が納得のいく着地点を見いだすことは難しい。現時点では「チーム、リーグはLGBTQをサポートするイベントを積極的に行い、賛同できない選手が参加しないのは自由」という状況は仕方がないのかもしれない。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)