いよいよ22年ワールドカップ(W杯)カタール大会が開幕した。

20日に行われた開幕戦では開催国カタールが0-2でエクアドルに完敗。W杯史上初めて開幕戦で開催国が敗れるという“歴史的1敗”を喫してしまった。それについては本当に残念だが、カタールがW杯を大成功させることを心から願っている。

思えば今大会を開催するカタールにはこれまで、不当な(とあえて言いたい)批判が多く寄せられてきた。スタジアム建設時に亡くなった移民労働者の人権問題や、男女の格差の問題についてなど。

そして開幕直前には「カタールがエクアドルの選手何人かにお金を渡し、負けてくれるように頼んだ」という“トンデモ報道”もなされた。

これについてはカタールのサンチェス監督が開幕戦の前日会見で「インターネットには偽の情報があふれている。ネットは便利な道具だが、同時にとても危険なものだ。我々はこのような情報には影響を受けないし、動揺したりしない」とわざわざ否定しなければならなかった。歴史的な一戦の前日だというのに。

移民労働者の人権については確かにW杯へ向けた準備の初期段階では軽視された部分はあっただろう。だがカタールでは国を挙げて改善に取り組んできだ。移民の方々が自分の職場環境が悪いと思えばすぐに転職ができたり、母国に帰ることができたりするよう法律も改正された。

そういった努力は欧州ではあまり報道されず、「人権を無視する国だ」という一方的な見方が欧州メディアを中心に固定されてしまっている。選手たちもまた、そういった報道をうのみにし、正義をふりかざしてW杯カタール開催への疑問を口にすることがトレンドになってしまっている。

国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長を聖人君子というつもりは毛頭ないが、同会長がカタールを批判する選手や関係者に向けて言い放った「自分もヨーロッパ人だが、欧州の人々は他人に道徳の講釈をたれる前に、自分たちが過去3000年間行ってきたことについて、今後3000年間謝罪すべきだ」という言葉は、まさに言い得て妙だと思う。

男女格差や贈収賄について言及するならば、日本だって胸を張れたものではない。最新のジェンダーギャップ指数でカタールは137位。でも日本だって116位で、共産主義の中国(102位)より低いのだ。贈収賄については東京五輪の後、続々と逮捕者が出ているのを見れば推して知るべしだ。

そもそも東京五輪開幕前に当時のJOCのトップは贈賄疑惑でフランス当局から捜査されていた。なのに欧州メディアから「日本は五輪を開催するのにふさわしい国なのか」といった論調が聞こえてきた記憶はない。男女格差について指摘する記事も少なかった。

結局、日本が欧州の人々から見てまあまあ知っている国なのに対し、カタールはいまだに「えたいの知れない宗教を信仰する、えたいの知れない国」。だから批判しやすいのだろう。判官びいきの気質が強い筆者としてはますますカタールを応援したくなる。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)

カタール対エクアドル 試合開始前、整列する両イレブン(撮影・横山健太)
カタール対エクアドル 試合開始前、整列する両イレブン(撮影・横山健太)
開会式が行われるアルベイトスタジアムの外では花火が打ち上がる(撮影・横山健太)
開会式が行われるアルベイトスタジアムの外では花火が打ち上がる(撮影・横山健太)
カタール対エクアドル 開幕戦でカタールに勝利し声援に応えるエクアドルイレブン(撮影・横山健太)
カタール対エクアドル 開幕戦でカタールに勝利し声援に応えるエクアドルイレブン(撮影・横山健太)