今季は全てのクラブが新型コロナウイルスの影響を財政面に大きく受け、収入が激減し、夏の移籍市場での補強がうまくできなかったことに加え、昨季が8月まで延長されたことにより、通常よりもタイトな日程で試合が組まれている。

そのため今季はチームを強化するに当たり、例年以上にカンテラ(下部組織)に目を向けるクラブが多くなった。実際、今季は昨季に比べ、スペイン1部リーグ8クラブでカンテラ出身選手のトップチーム登録数が増加している(※全データは12月25日時点)。

カンテラ出身選手のトップチーム登録数が昨季に比べて増えたのは、レアル・ソシエダード(13選手→16選手)、ビリャレアル(11選手→13選手)、バルセロナ(6選手→9選手)、レアル・マドリード(7選手→8選手)、バレンシア(7選手→8選手)、アラベス(3選手→5選手)、レバンテ(4選手→5選手)、ベティス(1選手→3選手)の8クラブ。

一方、登録数が昨季と同じクラブは、ビルバオ(18選手)、セルタ(10選手)、オサスナ(8選手)、アトレチコ・マドリード(3選手)、グラナダ(1選手)の5クラブ。この中で特にビルバオは、カンテラで育てた選手にクラブの命運を賭ける伝統を守っているため、カンテラ出身選手のトップチーム登録数がスペイン1部リーグ最多である。

そして昨季よりも登録数が減っているクラブは、エルチェ(4選手→3選手)、セビリア(3選手→2選手)、バリャドリード(3選手→1選手)の3クラブ。昨季に続き今季もカンテラ出身選手がひとりもトップチームに登録されていないのは、エイバル、ヘタフェ、ウエスカ、カディスの4クラブとなっている。

もし、このまま新型コロナウイルスの感染拡大が収束しない場合、今まで以上にカンテラが重宝される流れができる可能性がある。近年、移籍金の高騰が続いた中、今回のパンデミックは全てのクラブにとって、自分たちの財政面とカンテラを見直す大きなきっかけとなっただろう。

・今季のカンテラ出身選手のトップチーム登録数

1位:ビルバオ 18選手

2位:Rソシエダード 16選手

3位:ビリャレアル 13選手

4位:セルタ 10選手

5位:バルセロナ 9選手

6位:Rマドリード、バレンシア、オサスナ 8選手

9位:アラベス、レバンテ 5選手

11位:ベティス、エルチェ、Aマドリード 3選手

14位:セビリア 2選手

15位:バリャドリード、グラナダ 1選手

17位:エイバル、ヘタフェ、カディス、ウエスカ 0選手

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)