スペイン1部リーグの今冬の移籍市場が2月1日に終了したが、予想されていた通り、新型コロナウイルスの影響を大きく受ける結果となった。財政面に大きなダメージを受けていた各クラブの動きは鈍くなり、昨季と比べて収支ともに大幅に減少している。

パンデミック発生前の昨冬、各クラブの補強総額は直近10シーズンで2番目に高い1億3060万ユーロ(約163億2500万円)だった。ちなみにトップは2017-18シーズンの2億8820万ユーロ(約360億2500万円)。一方、今冬はわずか2045万ユーロ(約25億5625万円)で、昨冬と比べ6分の1以下となっている。

当然、選手放出で動いた金額も大幅に減少した。昨冬が8990万ユーロ(約112億3750万円)だったのに対し、今冬は4分の1以下の2125万ユーロ(約26億5625万円)。

選手の動きに目を向けると、昨冬は17クラブが計44選手を獲得し、18クラブが計58選手を放出した(期限付き移籍、契約解除含む)。一方、今冬は16クラブが計32選手を獲得し、19クラブが計39選手を手放していた。そんな中、最も積極的に動いたのは、シーズン開幕時に戦力が大幅に落ちていたバレンシアで最多4選手を補強した。

続いてヘタフェ、カディス、セルタの3クラブが3選手、アラベス、エルチェ、グラナダ、オサスナ、バリャドリード、ビリャレアルの6クラブが2選手、アトレチコ・マドリード、ベティス、エイバル、ウエスカ、レアル・ソシエダード、セビリアの6クラブが1選手をそれぞれ獲得している。一方、レアル・マドリード、バルセロナ、ビルバオ、レバンテの4クラブは一切補強を行わなかった。

補強を実施した16クラブ中、資金を投じたのはわずか6クラブのみ。投資額トップはレアル・ソシエダードで、スペイン人FWカルロス・フェルナンデスを今冬のスペインリーグの移籍金最高額となる1000万ユーロ(約12億5000万円)でセビリアから獲得した。

続いて、セビリアがアルゼンチン代表MFアレハンドロ・ゴメスをアタランタから600万ユーロ(約7億5000万円)で獲得している。

これに、ビリャレアルが200万ユーロ(約2億5000万円)、ヘタフェが125万ユーロ(約1億5625万円)、Aマドリードが100万ユーロ(1億2500万円)、セルタが20万ユーロ(約2500万円)で続いている。

日本人選手所属クラブの動きを見てみると、ヘタフェは久保建英に加え、スペイン人MFアレニャをバルセロナ、モロッコ代表DFシャクラをビリャレアルからそれぞれ期限付き移籍で獲得し高評価を得ていた。さらに戦力外だったチチソラ、ディアビ、モジェホ、パラベルサの4選手を放出している。久保獲得に期限付き移籍の手数料125万ユーロ(約1億5625万円)を費やした一方、選手放出による収入はなかった。

乾貴士、武藤嘉紀が所属するエイバルは、スペイン人MFアレイシュ・ガルシアをディナモ・ブカレストから完全移籍で獲得した。一方、ホセ・マルティネス、オラベ、コンジョルがチームを離れている。収支ともになし。

岡崎慎司がプレーするウエスカは、新監督にパチェタを迎え、スロバキア代表DFヴァヴロをラツィオから期限付き移籍で獲得した一方、エンワカリを期限付き移籍で出していた。収支ともなかった。

スペイン・トップ3に目を向けると、Rマドリードはウーデゴールとヨビッチを期限付き移籍で出し、その手数料として合計425万ユーロ(約5億3125万円)の収入を得ている。バルセロナはアレニャとトディボを期限付き移籍させたが、手数料は受けとっていない。

リーグ首位のAマドリードは、手数料100万ユーロ(約1億2500万円)をリヨンに支払い、フランス人FWムサ・デンベレを期限付き移籍で獲得した。一方、ジエゴ・コスタとの契約を解除し、マヌ・サンチェス、シャポニッチを手数料なしの期限付き移籍で出している。

新型コロナウイルスの影響を財政面に大きく受け、例年に比べ全体的に動きの少なかった冬の移籍市場が終了した。後半戦がすでにスタートし、シーズン終了まで約4カ月を切っている。【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)