今夏の移籍市場が8月31日に終了した。最終日に慌ただしくアトレチコ・マドリードのスペイン人MFサウール・ニゲス、バルセロナのフランス代表FWアントワーヌ・グリーズマン、セビリアのオランダ代表FWルーク・デ・ヨングがそれぞれチェルシー、Aマドリード、バルセロナに期限付き移籍し、コロンビア代表FWラダメル・ファルカオがラリョ・バリェカノに加入しスペイン復帰を果たした。

そして、とりわけ注目されたレアル・マドリードがフランス代表FWキリアン・エムバペへの2億ユーロ(約260億円)のビッグオファーをパリ・サンジェルマンに拒否された一方、レンヌから18歳の若きフランス代表MFエドゥアルド・カマビンガを獲得するなど、いくつもの大きな動きがあった。しかし、すべてのクラブが新型コロナウイルスの影響を受け、スペインリーグのサラリーキャップの調整が必要だったため、多くの取引が移籍金の発生しないフリートランスファーか期限付き移籍となり、金銭面の動きは少なかった。

今夏、スペインリーグに所属する全20クラブの補強総額は2億9250万ユーロ(約380億2500万円)。これは4億980万ユーロ(約532億7400万円)だった昨夏と比べ約30%減であり、スペイン史上最高の13億100万ユーロ(約1691億3000万円)を記録した2年前の2019-20シーズンと比較すると8割近く落ちていることになる。今夏、こんなにも支出が少ないのは、1億4510万ユーロ(188億6300万円)の2012-13シーズン以来、9季ぶりである。

欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス)の今夏の補強総額に目を向けると、プレミアリーグが13億3000万ユーロ(約1729億円)でトップ。続いてセリエAが5億5194万ユーロ(約717億5220万円)で2位、ブンデスリーガが4億1637万ユーロ(約541億2810万円)で3位、フランスリーグが3億5642万ユーロ(約463億3460万円)で4位、そしてスペインリーグが最下位。

スペインとプレミアリーグの間には10億ユーロ(約1300億円)以上もの大きな差があるが、これがここ数年間、スペインのクラブが欧州チャンピオンズリーグで大きな成功を収められてない原因の1つと考えられている。

今夏、補強費が最も大きかったスペインのクラブは昨季のリーグ王者Aマドリードで7500万ユーロ(約97億5000万円)。アルゼンチン代表MFロドリゴ・デ・パウルを今夏のスペイン最高額の3500万ユーロ(約45億5000万円)でウディネーゼから獲得したほか、ブラジル五輪代表FWクーニャやグリーズマンなどを補強している。

続いて、昨季の欧州リーグ王者ビリャレアルが5350万ユーロ(約69億5500億円)で2位、セビリアが3250万ユーロ(約42億2500万円)で3位、Rマドリードが3100万ユーロ(約40億3000万円)で4位、ヘタフェが1600万ユーロ(約20億8000万円)で5位、そしてバルセロナが1300万ユーロ(約16億9000万円)で6位となっている。

今季唯一の日本人選手所属クラブであるマジョルカは、8番目に多い900万ユーロ(約11億7000万円)を費やし10選手を獲得したが、日本代表MF久保建英の期限付き移籍に手数料を払っていない。一方、ビルバオが今夏唯一、補強費を1ユーロも使っていないクラブとなった。

また、今夏のスペインリーグの移籍金収入の総額は2億6000万ユーロ(約338億円)で、4億5500万ユーロ(約591億5000万円)の昨夏に比べ約40%減少している。トップはフランス代表DFラファエル・バランとノルウェー代表MFマルティン・ウーデゴールを売却したRマドリードで8300万ユーロ(約107億9000万円)。バルセロナが7980万ユーロ(約103億7400万円)、セビリアが3250万ユーロ(約42億2500万円)で続いている。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)