サウジアラビアで開催中のスペインスーパーカップでは、準決勝でレアル・マドリードがバルセロナを、ビルバオがアトレチコ・マドリードをそれぞれ下し、16日の決勝に進出している。

リーグ戦と国王杯の王者が対戦する同大会は以前、特に一部のクラブにとってはあまりうま味のある大会ではなかった。この状況を受けスペインサッカー連盟(RFEF)は、大会を盛り上げ、より多くの収入を得るという2つの目的達成のために尽力する。

その結果、大会方式をリーグ戦の1、2位と国王杯ファイナリストの計4クラブ参加にリニューアルし、開催期間も夏から1月に変更。さらに大きく変わったのは、スペインリーグの魅力を他国に広めるため大会自体を海外で開催したことだ。すでに2018年夏にモロッコで初めて実施していた海外開催にさらに力を入れ、20年から22年までの3大会の開催権をサウジアラビアに1億2000万ユーロ(約156億円)で売却したのである。

今大会の4000万ユーロ(約52億円)のうち、2000万ユーロ(約26億円)が4クラブに分配されることになっている。RFEFとサウジアラビア政府はその内訳を公表していないものの、均等ではないと報じられており、最大でRマドリードとバルセロナが1250万ユーロ(約16億2500万円)、Aマドリードが450万ユーロ(約5億8500万円)、ビルバオが250万ユーロ(約3億2500万円)をそれぞれ受け取ることになるとのことだ。

こんなにも大きな差がある理由として、大会成績だけでなく、クラブのブランド価値や実績、放映権などを加味されていることが挙げられている。一方、残り2000万ユーロ(約26億円)は全て、育成年代やアマチュアカテゴリーのために使われるという。

自国の大会を海外開催することに対しては以前よりさまざまな意見が出ており、選手やファンから不満の声も上がっている。そんな中、ビルバオFWラウール・ガルシアは「自国でやるべきゲームをわざわざ他国でやるなんて意味のないことだ。サッカーは近年大きく変わり過ぎた。サポーターのことを考えず、スポンサーが大切になっている。僕がサッカーを始めた頃と今とでは多くのことが変化し過ぎているので残念だ」とRFEFの姿勢を強く批判した。

その一方で、AマドリードMFコケは「ラウールの意見を尊重する」と前置きしつつ、「それでも僕たちはその大会方式でプレーするしかないし、どこで大会が開催されようとも戦わなければいけないんだ」とプロフェッショナルとしての発言をした。

また、RマドリードGKクルトワはスタジアムの照明について「少し見づらいし、日中のように感じることができるスペインリーグのような明るさがないので慣れるのが大変だ」とプレーに不具合があることを訴えていた。

一方、RFEFのルイス・ルビアレス会長は「自国のスーパーカップを我々のように変更することに興味を持ってくれている国がいくつもある。全ての会長や監督、選手が“正解だった”と私に言ってくれているので、そんなに悪い結果ではなかったと思う」とリニューアルした同大会に自信をうかがわせていた。

運営、選手、サポーターなど、それぞれの立場での考え方や意見があるものの、この状況が変わることは当面なさそうだ。なぜならRFEFがすでにサウジアラビア政府と、29年まで開催することで合意していると報じられているからだ。そのため昨年の大会が新型コロナウイルスの感染拡大の影響でセビリア開催に変更された時のように、何らかのサプライズが起こらない限り、しばらくはスペイン国外で行われることになるだろう。

サウジアラビアの開催というRFEFの決定は、巨額の外貨をもたらせ、参加クラブに大きなモチベーションを与え、アマチュアカテゴリーを手助けするというポジティブな面がある一方、過密日程の中、1番の主役である選手たちを長距離移動や気候、環境の変化で酷使し、ファンをないがしろにするものになっている。

そんな中、16日にRマドリードとビルバオが今季最初のタイトルをかけ決勝で対戦する。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)