22年ワールドカップ(W杯)カタール大会で日本と1次リーグで対戦するスペイン代表が、いくつかの課題を残したまま、本大会前最後の公式戦2試合を終了した。

6月に始まった欧州ネーションズリーグでスペインは、最上位リーグA・2組でポルトガル、スイス、チェコと対戦。6試合3勝2分け1敗、8得点5失点の勝ち点11という成績で終え、ポルトガルを勝ち点1上回り、首位で2大会連続のファイナルフォー進出を決定した。

グループリーグ突破は上々の結果と言えるが、その試合内容は不安が残るものだった。スペインのボール支配率は1試合平均68・5%といつも通り高く、全ての試合で相手を上回った。だが1試合平均1・3得点という数字が示す通り、攻撃は切れ味を欠き、決定力不足というネガティブなイメージを残していた。強豪ポルトガルとの最終節、モラタの決勝点で辛くも勝利した後、「スペインが誰にとっても簡単な相手ではないことを証明できた」とルイス・エンリケ監督は大きな自信をうかがわせたものの“ゴール欠乏症”という慢性的な問題は全く解消できていない。

さらに、失点はそこまで多くなかったが、特に相手のカウンターやセットプレーで度々守備の脆さを露呈し、CKから2点を奪われ1-2で敗れた第5節スイス戦は多くの批判を浴びる結果となった。試合後、守備の弱さを指摘された監督は、「私はそうは思わない。むしろその逆だ。チームで一番強いラインはディフェンスだと思っている」と反論したが、説得力に欠けるものだった。このように、以前から続く決定力不足に加え、守備面のもろさも問題視され、12年ぶり、2回目の優勝を狙うW杯に向けて不安要素が浮き彫りとなっている。

スペイン国内では現在、W杯メンバーについて議論されているが、先月の代表戦の向けた招集メンバー発表時に監督が語った、「もしW杯が明日行われるなら、メンバーリストは同じものになるだろう」というコメントからおおむね確定しているようだ。

スペイン各紙のメンバー予想をまとめると23人が決定済みとみられている。また、先月が初招集ながらポルトガル戦でモラタの決勝点をアシストするという大仕事をやってのけた20歳のFWニコ・ウィリアムズ(ビルバオ)が、わずか2試合の出場でW杯参加をほぼ確定させたことで、前線は残り少ない枠をめぐり競争が激化しているとのことだ。

・W杯行き濃厚の23人

<GK(3人)>

ウナイ・シモン(ビルバオ)

ロベルト・サンチェス(ブライトン)

ダビド・ラヤ(ブレントフォード)

<DF(8人)>

アスピリクエタ(チェルシー)

カルバハル(レアル・マドリード)

パウ・トーレス(ビリャレアル)

エリック・ガルシア(バルセロナ)

ラポルテ(マンチェスター・シティー/先月はけがで招集外)

イニゴ・マルティネス(ビルバオ/先月は招集外)

ジョルディ・アルバ(バルセロナ)

ガヤ(バレンシア)

<MF(7人)>

ブスケツ(バルセロナ)

ペドリ(バルセロナ)

ガビ(バルセロナ)

コケ(アトレチコ・マドリード)

マルコス・ジョレンテ(アトレチコ・マドリード)

ロドリゴ・エルナンデス(マンチェスター・シティー)

カルロス・ソレール(パリ・サンジェルマン)

<FW(5人)>

モラタ(アトレチコ・マドリード)

フェラン・トーレス(バルセロナ)

サラビア(パリ・サンジェルマン)

ダニ・オルモ(ライプチヒ/先月はけがで招集外)

ニコ・ウィリアムズ(ビルバオ/先月が初招集)

これによりW杯行きの切符は残り3枚となるが、ルイス・エンリケは少数精鋭を好む監督だ。昨夏の欧州選手権ではメンバーが23人から26人に増加されたにもかかわらず、「私はこれまでの大会でいつも18~19選手を起用してきた。皆がチャンスを得られるように、多くの選手を連れていきたくはない」と説明し、2人少ない24人で臨んだ。今回その件について質問されると、「26人かもしれないし24人かもしれない。まだ決めていない」と返答していたため、枠が減る可能性も否めないだろう。

全ては監督次第となる中、MFでメンバー入りの可能性がある選手として、ミケル・メリーノ(レアル・ソシエダード)や負傷中のチアゴ(リバプール)が挙がっている。前線は人材が豊富で、アセンシオ(レアル・マドリード)がメンバーに入る可能性が高く、ジェレミ・ピノ(ビリャレアル)、ボルハ・イグレシアス(ベティス)、ジェラール・モレノ(ビリャレアル)、ロドリゴ・モレノ(リーズ)が少ない枠を争うことになりそうだ。

また、体調さえよければレギュラーになれる力のあるアンス・ファティ(バルセロナ)とオヤルサバル(レアル・ソシエダード)がこの争いに加わる可能性がある。ケガからの復帰後、まだ本調子でないアンス・ファティ(バルセロナ)は今後のコンディション次第であり、ルイス・エンリケにとって重要な選手である昨年3月に重傷を負ったオヤルサバル(レアル・ソシエダード)に関しては非常に厳しい状況であるものの、ギリギリまで回復状況を見守るようだ。

スペインはこの後、11月10日にW杯メンバーを発表し、17日にヨルダンとW杯最後のテストマッチを行い、23日にW杯初戦コスタリカ戦に臨む予定である。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)