バイエルン・ミュンヘンが前人未到のブンデスリーガ5連覇を達成した陰で、大損害を被った人々がいたようだ。

 リーグ優勝を果たした暁には、バイエルン地方の民族衣装に身を包んだ選手や監督が、市内中心部にある市庁舎のバルコニーに登場し、マリエン広場に集まったファンへ向けて優勝報告会を行う-それがBミュンヘンの慣例となっている。

 しかし昨今、民間人などソフトターゲットを狙ったテロの危険性が欧州でも高まっており、大勢の人が集う場所はリスクが高いと見られている。また、結果的には株価操作が目的の単独犯行だったが、先月中旬には香川真司が所属するドルトムントのチームバスも襲撃されるなど、プロサッカー選手も十分攻撃の対象になりうることが再認識されたばかり。そのため、大衆紙「ビルト」によると、優勝報告会が行われた5月20日は、朝9時からマリエン広場周辺の立ち入りが厳しく制限され、ショッピングに訪れた一般の買い物客も大きく迂回しなければならないなど、かなり不便な状況を強いられていたという。

 その中でも特に怒りをあらわにしているのは、ミュンヘン市庁舎から徒歩5分、旧市街の一角にあるレストラン「アルターホフ」を経営するヨハネス・ミュラーさんだ。

 ミュラーさんは20日、普段通り自らが利用するアルターホフの店舗駐車場に入ろうとしたところ、付近をパトロールしていたセキュリティー関係者に止められ、「警察に電話した」ほどの押し問答になり、さらには「この立ち入り規制のせいで、ウチで行われる予定だった某会社のパーティーがなくなり、ミュンヘン出身の85歳の女性の誕生日パーティーもなくなった。予約14件がすべてキャンセルになり、予定していた100人以上が来なくなった。この損害額は、1万5000ユーロ(約187万円)にのぼる」と激怒している。

 もちろん被害に遭ったのはアルターホフだけではなく、周辺の飲食店、小売店も軒並み閑古鳥が鳴く事態となった。マリエン広場の脇にある、主に化粧品などを販売するルートビヒ・ベック社のディーター・ミュンフ代表取締役も「17時からほとんど客が来なくなったよ」と嘆き節だ。

 ビルト紙によると、ミュラーさんは怒りのあまり、ミュンヘン市のディーター・ライター市長に「誰がこの損害を招いたんだ?」と抗議の手紙を送ったそうだが、同市広報担当のシュテファン・ハウフ氏は「我々は、『すべてが問題なく順調にいった』という見解を持っている」とコメントした。

 ミュンヘン旧市街の約200店舗をまとめる団体「シティーパートナー・ミュンヘン」のウォルフガング・フィッシャー氏は「来年(以降、優勝した場合)は優勝報告会を(小売業が閉店している)日曜にやるか、もしくは他の場所でやってほしい。(ミュンヘン中央駅の南約1キロにある)テレージエンビーゼ公園は良い場所ではないだろうか」と提案しているが…。

 来年以降、どのようにBミュンヘン優勝報告会が行われていくのか、その行方に注目したい。