バイエルン・ミュンヘンに所属するフランク・リベリーが、過去の苦労にもとづく粋な計らいをした。

 リベリーは20歳前後の時にフランスリーグ3部オリンピック・アレスに所属していたが、同クラブは経営破綻してしまい給料が支払われなくなったため、一時的に実家へ帰った。今日、年俸1200万ユーロ(約14億7600万円)を稼ぐ男は、かつて専門誌「スポーツビルト」のインタビューで、当時のことをこう回顧していた。

 「実家に戻り、道路工事歴20年の父親を手伝うことになった。スコップで石を集めてはトラックに積み上げ、今度はその穴を埋める作業だ。あの時に、父親がどれだけ大変な仕事をしてきたかようやく理解できたし、『自分はサッカー選手として成功するしかない』と思ったんだ。あの仕事をした経験は、もちろん今でも大きな誇りだ」

 リベリーは5月30日から6月1日までの3日間、ミュンヘン市南部郊外にある自宅の庭の手入れをマリオ・シュティーアルさんら4人の庭師にお願いしていた。すると31日夕方、清掃や芝生の植え込み、雑草の除去などの仕事を終えた彼らを待っていたのは、リベリーからのユニフォーム、ジャージ、帽子、パーカーなどのプレゼント。同選手はその時の写真に「素晴らしい仕事をしてくれるチームに感謝!」とコメントをつけ、自身のインスタグラムに公開している(※現在は削除)。

 「リベリーは仕事中の我々のところに来て『食べたいものや飲みたいものはないか』と尋ねてきたり、まるで我々の仲間のようで、本当に人間味のある男だった。こんなこと、サッカー選手の誰もができることではないよ」と大衆紙「ビルト」に話したシュティーアルさんは、元々リベリーの大ファン。背番号7が書かれたBミュンヘンの帽子をかぶりながら作業をしたことも少なくなかったシュティーアルさんにとって、今回のご褒美は「これまでで最高の出来事」だったという。

 肉体労働の経験を「自分のルーツとして一生忘れることはない」と話していたリベリー。その言葉に嘘偽りはなかったようだ。