長谷部誠と鎌田大地が所属するフランクフルトのケビン・プリンス・ボアテングが、サッカースタジアム内で起こった人種差別問題にも、ビデオ判定を活用するよう提案している。

 ボアテングはACミランでプレーしていた2013年1月、4部プロ・パトリアとのテストマッチ中に、敵のサポーターから「僕がボールを持つたびに猿の鳴きまねをされた」ため、試合途中でピッチを去った過去を持つ。当時ボアテングは、「このようなことがいまだに起きるなんて、恥ずべきこと。到底受け入れられない。白人も黒人も一つだ。人間に“セカンドクラス”なんてものは存在しない」とコメントしていた。

 今シーズンからブンデスリーガはビデオ判定を導入し、PKなど得失点にかかわる場面や、レッドカードに該当しうる悪質なファウルが起こったシーンなどで、これを用いている。そんな中、専門誌「フォーカス」のインタビューを受けたボアテングは、人種差別について、このように語っている。

 「今は西暦2017年だが、この問題を解決する方法はいまだに見つかっていない。ブンデスリーガでは(ボールがラインを割ったかどうかの判断をする)ゴールライン・テクノロジーが使用され、そして今季からはビデオ判定が導入された。しかし、なぜそれらの新しい技術が、人種差別の野次を飛ばした人物の特定には用いられないのだろうか。彼らはスタジアムから追い出されるべきだし、二度とそこに帰ってこられないようにしなければならない。決して起こるべきではないことなのに、毎シーズン同じような事件が起きているのが現状だ」

 自身が経験した許しがたい出来事をきっかけに、かつてボアテングは国連の補助期間である人権理事会に招待され、「ガーナ代表でプレーしていた時、マラリアからどう身を守っていくかを学んだが、予防接種だけでは不十分。マラリアを媒介する蚊が繁殖する湖沼や湿原をなくさなければならない。マラリアと人種差別は多くの共通点を持っている」と演説をしたこともある。

 ボアテングの願いが届くその日まで、彼はスタジアムでの人種差別と徹底的に戦い続ける。