専門誌「スポーツビルト」の創刊30周年を記念し、同誌は先月、現役ドイツ代表でレアル・マドリードに所属するトニ・クロースを臨時編集長に任命。その機会に同選手は、かつて自身も所属していたバイエルン・ミュンヘンのみならず、ドイツサッカー連盟(DFB)でもスポーツディレクターを務めていた“元上司”マティアス・ザマー氏にインタビューを行っている。

 その中でクロースは「DFBとBミュンヘン、SDとして働く上でどちらのほうがより楽しかった?」と、いきなり鋭い質問をぶつけた。これに対しザマー氏は「おそらく順番というものがかなり大きいだろう。もし先にBミュンヘンでSDをやっていたら、その後DFBでも同じ仕事をしようと思ったかは分からない。というのも、Bミュンヘンでの仕事は本当に心身の消耗が激しいからだ。もちろんBミュンヘンで働けたことについて心から感謝しているのは間違いない。それだけは誤解しないでくれ。ただ、現役時代に選手としてBミュンヘンに所属していなかった場合、あのクラブで自分の役割を見つけるのは簡単なことではないんだ。ウリ・ヘーネスとカール・ハインツ・ルンメニゲという2人の間で仕事をするのは、立派な“挑戦”と言えるからね」と回答している。

 その後、臨時編集長としての立場に慣れてきたのか、クロースはさらに核心へ迫る、少しだけ意地悪な質問を投げかけている。

 「BミュンヘンのSD時代にあなたが犯した最も大きな過ちは、2014年ワールドカップ優勝メンバーの1人(クロース自身のこと)を移籍させてしまったことでは?」

 するとザマー氏はこれについて、「誰でも時々、しっかりと分析しなければいけない状況に出くわすと思う。人生において常に正しいことをやってきた人間なんて、どこにいる? Bミュンヘンにトニがいれば、もしかしたらもっと何度も欧州CL優勝、もしくは決勝に行けていたかもしれない」と前置きし、「今、この(フリーとなった)立場なら言えるだろう。トニを移籍させてしまったのは、確かに間違いだった」と、あっさり自分の非を認めた。

 だが、最後に「でもトニが選手として成長すること、トニが自分の価値を高めることを考えると、あの(BミュンヘンからRマドリードへの)移籍は非常に正しいものだったね」と付け加えることを忘れなかったのは、選手として、また指導者やSDとして、これまで数々のタイトルを獲得してきたザマー氏が、極度の負けず嫌いだからなのかもしれない。