◆長谷部誠(32=フランクフルト、MF)

 序盤はスタメンから外れることもあったが、3人のCBの中央で起用されるようになってからはチームの主軸の1人として欠かせない存在となった。首脳陣からの信頼も非常に厚く、スポーツディレクターのヒュブナー氏からは「日本のベッケンバウアー」と称され、コバチ監督からは「彼が後ろでプレーすることで(プレーの)バリエーションが増えている。非常によくやっている」と絶賛されている。180センチとDFにしては十分な上背があるわけではないが、CBの位置から守備陣を素晴らしく統率し、常に視野を失わず、賢明なパスでゲームを組み立てている。

 今年最終節のマインツ戦前には1年間の契約延長にサイン。スタジアムでそのことがアナウンスされた時に、ファンからは大きな歓声が上がっていた。「ファンにそのように受け入れてもらえるというか、感じてもらえるのは、選手として非常に嬉しいことです。自分の中では今シーズンもそうだし、先シーズンもそうですけど、ドイツに来てから一番充実感がある。スピードとかそういうところは落ちているかもですけど、経験とかそういうところで成熟度はサッカー選手として増してきている。そういうものを維持するんじゃなくて、これからまたさらによくする部分を求めていきたいと思います。今やっぱり、サッカーやっていても楽しい」と充実感を浮かべて語っていた。

◆原口元気(25=ヘルタ、FW)

 欧州リーグやドイツ杯を除くと、ヘルタのフィールドプレーヤーではシュターク、プラッテンハート、イビセビッチに次いで出場時間が多かった原口。今季開幕前に行われたEL予選3回戦ではホーム、アウェーともに先発から外れてしまい、引き分け以上が義務付けられていた第2戦では最後までベンチを温めるなど、開幕を前に原口の地位は揺らいでいた。しかし、その直後に行われた練習試合アルジャジーラ戦で2ゴールをマークし、溜まっていた自らへの怒りを解放するかのように鬼気迫る表情でガッツポーズをしていた彼は、開幕戦で定位置を取り戻し、第2節インゴルシュタット戦では2アシストを記録。ただし、周囲の攻撃的プレーヤーが得点を重ねていく中、前半戦はノーゴールに終わり、また調子を落とした終盤はそれまでと一転して出番も減少してしまった。「悔しいですけど、長いシーズンなのでこういう時もある。また明日からの自分の行動で変わってくると思うし、僕は(一生懸命練習することを)続けるだけです」とブレーメン戦後に話していた原口にとって、冬のキャンプは自身の立ち位置をより強固なものにするための重要な戦いの場となる。

◆酒井高徳(25=ハンブルガーSV、DF)

 第10節ドルトムント戦までに積み重ねた勝ち点はわずかに2。今年こそはもう残留は無理だと思わざるをえないほどの大苦戦をしていたハンブルガーSVだったが、酒井高徳がキャプテンに就任後は6試合で3勝2分1敗と、一気に上昇気流に乗ってきている。ギスドル監督に「ゴウトクは今自分たちの状況に必要なすべてを体現している。ピッチ上で倒れるまで全力を出し尽くそうとする、疲れ知らずの選手。オープンで、正直で、コミュニケーションをとれる」と白羽の矢を立てたのだ。

 酒井は気負うことなくその重圧と向き合おうとしている。「これまでの自分と同じようにありたいと思っています。大口をたたいたりはしない。それにぼくはこれまでも誠実に取り組んできたプロ選手だし、若い選手を後押ししたり、どうやってこの仕事で正しくやっていくのかを示してきたりしました。だから大きく変わる必要はないと思います」とビルト紙のインタビューに答えていた。ここ最近は本職ではないボランチで起用されることが多かったが、守備では全体のポジショニングに終始気を配り、攻撃でもシンプルなプレーで周りの選手の良さを引き出すように気を配っている。

 キャプテンとしての自覚も強まってきているようだ。マインツ戦後には「あまり良い内容ではないっていうのは自分たちではわかっている。点の取られ方だったり、シチュエーションでやっぱりチームがドンと落ちてしまうところっていうのが絶対あると思う。そこでしっかりチームをかき立てるってところも大事だと思っている。チームとして心配はしてないし、もう1試合あるんでホームで自分たちらしいサッカーってのをしっかり出せれば良いかなと思います」とキャプテンらしい言葉を残し、そしてまさにその言葉通り、前節シャルケ戦ではチームパフォーマンスがマッチして見事に2-1で勝利。まだ順位上は降格圏だが、後半戦に向けて大いに希望を持てる状態で冬休みに入ることができた。

◆大迫勇也(26=ケルン、FW)

 才能は高く評価されながらも、なかなか最良な形でチームにはまっていなかった大迫がようやく本領を発揮しだした。本来のポジションながら、なかなか起用されずにいたCFの位置でこれまでとは見違えるような躍動感あふれる動きで好調ケルンの攻撃を引っ張った。得点王争いで2位につけているモデステのベストパートナーとしてファンにも愛される存在になった。

 その爆発ぶりをスポーツディレクターのシュマッケ氏は「彼の持つクオリティーが今まで以上に引き出され、みんなに認知してもらい、彼に対するディスカッションが終わったことを本当にうれしく思う。ユウヤは素晴らしい選手なんだ」と褒めたたえていた。負傷者が続出したことで終盤はトップ下のポジションでプレーせざるを得なかったが、役割をしっかりと理解したうえで、攻撃に変化をつけるプレーを高いレベルでこなしていた。負傷者が戻ってくる後半戦は、再び定位置のFWで起用される可能性が高いとみられている。

◆香川真司(27=ドルトムント、MF)

 ドルトムント在籍5シーズン目の香川は、ブンデスリーガ出場7試合無得点1アシストという結果を見ても分かるように、過去にないほど苦しい前半戦を過ごした。確かに、リーグ開幕直前のドイツ杯1回戦トリアー戦、欧州CLレギア・ワルシャワ戦ではゴールを決めているものの、いずれも格下だった感は否めず、またシュールレ、ゲッツェというドイツ代表常連組に加え、デンベレ、ゲレーロ、モルらも新たに加入したため、中盤のポジション争いは激化。さらには足首の怪我にも悩まされ、トゥヘル体制2年目の今季、確固たる地位を築いているとは言い難い。年内最終戦のアウグスブルク戦後に香川が話したように、現在のチームは「結局ウスマン(デンベレ)だったり、あいつが強烈な個はあるんですけど、そこに頼りきってるところは正直ある」(香川)という状態だが、まずはこの中断期間で負傷箇所をしっかりと治し、年明け後の後半戦では、周囲を生かし、生かされる存在として、ピッチの上で躍動してほしい。

◆内田篤人(28=シャルケ、DF)

 1年9カ月ぶりの公式戦は、たった数分間の出場だった。しかし、膝の手術と長いリハビリを経てようやく戻ってきた12月8日の欧州リーグ(EL)ザルツブルク戦は内田、彼の仲間、そしてファンにとって、きっと忘れられない1日となっただろう。ただし、11月下旬の「でも今年はそんなバンバン出る感じじゃないと思うけどね、もはや」という本人の言葉通り、ELでのカムバック劇後、ブンデスリーガでは試合出場はおろか、メンバー入りすら果たしていない。現状、バインツィアル監督はオーストリア代表MFシェプフに右サイドを託しているが、22歳と若く、豊富な運動量でチームに貢献する同選手は、内田にとって手ごわい競争相手である。だが「治るためならなんでもしてきた」と淡々と、それであって力強く話した内田がこのまま沈んでいくとはどうしても思えない。首脳陣や監督の信頼を積み重ねられるか。彼にとっての本当の戦いは、まだ始まったばかりだ。

◆宇佐美貴史(24=アウクスブルク、FW)

 2度目となる海外挑戦は、苦難のスタートだった。加入直前に指揮官が変わり、新たに就任したのは守備的戦術と屈強なフィジカルを好むシュスター監督。開幕戦こそ途中出場だったものの、ドイツ杯を含め第11節まで出番は一向に与えられなかった。しかし、「練習量は俺が一番多かったと思います」と、はっきり言い切れるほど愚直にトレーニングへ励み、「食べるもの、飲むもの、寝る時間、また寝るまでのサイクルもそうですし、考えること、普段の過ごし方…結構変えすぎて『これあかんかな』って思うくらい」サッカーと真摯に向き合い続けた宇佐美は、第12節で12分間の出場機会を手にし、以降は16分、21分とプレー時間も増加。そしてマヌエル・バウム新監督の初陣となった第15節ボルシアMG戦では、ついに先発の座を獲得するに至った。この試合で相手MFクラマーの足首を負傷させてしまったことはもちろん褒められないが、あれだけの激しいタックルは、これまでの宇佐美には見られなかった点であり、守備の意識は以前と比べ格段に向上している。「ぶっちゃけ、オフはいらない」と話す宇佐美が目指すもの、それは後半戦での逆襲に他ならない。

◆武藤嘉紀(24=マインツ、FW)

 けがから復帰後3試合で2得点。マインツ関係者も得点力に秀でた武藤の復帰を心から喜んでいた。コルドバとの2トップはチームの攻撃力に大きなプラスとなるオプションとして多大な期待が寄せられていた。まさにそのオプションが試され始めた時に、またしても膝の負傷で長期離脱せざるをえなかった。11月半ばにはチーム練習に合流。ドイツメディアには「ムトウは次節から復帰するだろう」という記事が毎節のように上がっていた。だが、結局のところ今年中の復帰は流れてしまった。シュミット監督は「練習でシュートや1対1の競り合いの場面で、最後の思い切りがまだ足らない」とその理由を語っていた。最初にひざのけがで離脱した時も、シュミット監督は「大事なのは頭から一切の不安をなくしてプレーできるかどうかなんだ。その最後の数パーセントのところが消え去れば選手はしっかりとまたプレーをすることができる」と話してくれたことがある。2度目のけがというのもあるだろう。監督は慎重に慎重を重ねた。また終盤の相手が残留争いに苦しむハンブルガーSV、上位争いに食い込むフランクフルトと、一筋縄ではいかない試合が続いたことも影響している。激しさを超えた試合になることも予想されるからだ。中断期には集中的な合宿とテストマッチも行われる。そこで本当にもう心身ともに問題ないことを示すことができれば、後半戦はまた貴重な戦力として起用されることだろう。

【中野吉之伴、鈴木智貴通信員】