元日本代表監督で、2日にナントの監督に就任したバヒド・ハリルホジッチ氏(66)の初陣は3失点完敗となった。前半5分に先制点を許し、7分にはGKタタルシャヌがDFミズアガにパスしたボールを奪われ、さらに失点。指揮官が「全く違ったスタートを予想していた。心理的にチームは影響を受けた」と振り返ったように、開始7分での2失点でリズムを失った。42分にはミズアガのファウルで与えたPKを決められ、前半3失点で開幕から低調なチームの勝機は遠のいた。

試合後は日本代表でもそうしたようにベンチ前に立ちつくし、ピッチ上の現状を目に焼き付けた。会見ではかなりの小声で語り始めた。ハリルホジッチ監督は「美しいチームであるボルドーを祝福しなければならない」とまずは相手に敬意を示し、次第に言葉に力を込めて「われわれは全ての面で圧倒された。フィジカル的にも、戦術的にも、個々でも、チームワークでも。現状は、ちょっとひどい。皆が自覚しなくてはならない」と訴えた。

20チーム中19位に沈んでいるナントに足りないものを問われると「全部だ」と即答。「フィジカル、戦術、メンタル、技術、全て。真実を言わなければならない」。ただ、力不足は認めた上で希望の光も見つけたようだった。後半12分にMFボリシアが右足でシュートを放ち、37分にはFKをDFディエゴカルロスが頭で合わせるなど、いくつかの好機があった。ハーフタイムには「われわれはフィジカル的にも戦術的にも高い位置でプレッシングする準備はできていない。少し待った方がいい」と選手たちに声をかけたが、反攻を試みたチームの動きには「多少の満足ができた」と手応えを語った。

ハリルホジッチ監督は現役時代の1981~86年にナントでFWとして活躍し、リーグ優勝や2度の得点王に輝いた。成績不振から解任されたカルドソ監督の後任として32年ぶりに古巣に復帰。2日午後から練習を指揮した。ボルドー戦まで練習はわずか5日で、午前9時から夜遅くまでクラブハウスにこもり、選手の特徴把握、分析に費やした。筋トレルームやマッサージルームでの携帯電話は使用禁止、練習場への到着時間厳守など、日本代表監督時代と同様に規律を大切にしているという。

開幕から1勝3分け5敗と2部への降格危機のまま戦いは続く。この困難に向かうハリルホジッチ監督は会見で決意表明のように語った。

「ナントがこのような状況にいるのは、考えられない。本当に悲しい。でもチャレンジを引き受けたので、私は仕事をしなければならない」

「我々は四方からの批判に値する。これを受け入れて、プライドと強い意志を見せなければならない。そしてできるだけ早く抜け出さなければならない」

各国代表の国際親善試合による2週間の中断を挟んで、21日にホームでトゥールーズと対戦する。1年前、日本をW杯ロシア大会出場に導いた指揮官は、フランスで新たな戦いに臨んでいる。(松本愛香通信員)