【イスタンブール9日(日本時間10日)=木下淳、オルムシュ由香通信員】ドルトムントからトルコ1部ベシクタシュに期限付き移籍したMF香川真司(29)が、本拠地デビューした。2-0で勝ったブルサスポル戦の後半22分から途中出場。3日の移籍初戦2発に続くゴールは逃したが、2種類の応援歌などで歓迎された。当地では大人気だが「甘えない」生活を自らに課し、次は15日の敵地マラティヤスポル戦で初先発と3点目を狙う。

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香川がトルコの熱狂を肌で感じた。約4万2000席が完売したボーダフォン・アリーナ。入場時のお辞儀で心をつかむと、2点リードになった直後の後半19分にスタンドから「シンジ・カガワ」の応援歌が降り注ぐ。聴いたギュネシュ監督が思わず、ウオーミングアップしていた香川に「早く」と手招きした。22分から出場、体感気温0度の場内が沸騰した。ドルトムントで8万人の声援を浴びていた男でも「素晴らしい雰囲気。後押しに感謝したい」と興奮を隠せなかった。

司令塔のセルビア代表MFリャイッチを左に回し、4-2-3-1のトップ下へ。マンマークされた中、危険タックルも鋭いターンでかわすなどボールを触るたびに沸かせた。まだ息が合わず、今節はシュートも打てず「連係は課題。自分を理解してくれる、生かしてくれる仲間を探している最中」だが、ファンの中では「伝説の始まり」。ホーム初戦にして早くも2種類の応援歌が完成し、試合後も2得点のユルマズに続いて勝利の儀式を体験した。

トルコ入りから10日。出歩けない人気と交通渋滞のため外出を控えている。ガラタサライ長友邸に招かれた以外は自宅と練習場の往復で「スターの長友さんに比べたら質素ですよ」と笑うが「環境は申し分ない。何よりジムも近い」と余念がない。仲間とは英語でコミュニケーションを取り、不便もない。一方で「いきなりイルハン(コーチ)が辞めちゃった。ロッカールームで『今日からいなくなる』って。そんなことあるんや」と刺激的な日々だ。

衝撃2発デビューに、ドルトムント、マンチェスターUと歩んだキャリアをリスペクトしてくれる国柄。だから自戒する。「この1週間、非常に盛り上がっていると分かっていた。トルコの方は優しい。だからこそ甘えちゃいけない」。今季終了まで4カ月で「時間は短い。染まらず、自分自身を問いただして結果を出さないと」。移籍の意味を考えれば、世界有数の観光都市イスタンブールでも浮かれて過ごすことはない。