2日にフランス1部ナントの監督を辞任したバヒド・ハリルホジッチ氏(67)が、同日に行われた練習試合のジェノア戦後、テニス選手がするパフォーマンスのような形で別れを告げたと、3日付のフランス紙レキップが報じた。

ハリルホジッチ氏の辞任は、ジェノア戦開始1時間前の19時。オフィス内でサインがなされたという。選手たちはアップの直前に監督が辞任することを聞かされたと報じられている。

だが、ジェノア戦の終了後、クラブから退任するハリルホジッチ氏について一言もなかったという。昨季、クラブを1部残留に導いた監督に対して、感謝の言葉ひとつなかったと報じた。

このような扱いになることを察していたのか、ハリルホジッチ氏は試合後に自らアクションを起こした。ピッチ上で輪になって集まっている選手たちの真ん中に立ち、勝者のように両腕を突き上げて芝生にキス。まるで試合に勝利したテニスプレーヤーのように、観客席の四方にあいさつを行った。

試合前の退任決定で「当然、奇妙な雰囲気の中で」行われたと同紙が伝える試合後、ハリルホジッチ氏の独特のあいさつは「ラ・ボジョワール(本拠地)の拍手喝采を受けるかのようだ」と報じられている。観衆は4800人だったという。

ハリルホジッチ氏は「1週間前に、私は家族と一緒に(クラブを)去るという決心をした」と辞任を決意した時期を明かした。「私は変わらず(クラブに)愛着を持ち続ける」と前置きした上で「私は今シーズン、たくさんの野心を持っていた。この新しいチームのプロジェクトについて、2、3カ月か、それ以上仕事をした。不幸にもこのプロジェクトは、私が望んでいたものではなかった」と、補強なのか、真相は不明だが、自身が定めたラインに届かなかったことが退任理由だと話した。

「(1日に)会長と非常に建設的な話し合いをした。彼は、私が(クラブに)残るためにとても執拗(しつよう)に頼んできた」と引き留められたことを明かした。昨年10月に2部降格が現実味を帯びていたチームを引き受け、1部残留を果たしたことについて「我々はすばらいい仕事をした」と胸を張った。

開幕直前での退任にも「私はすでに選手として高い評価を得ていた。監督としてもその点は同じだ」と、日本代表で監督を務めていた時と同様、自らの仕事に自信を見せた。

モロッコ代表監督に就任するのではないかと報じられている。すでに就任が決まっているから、ナントの監督を辞任したのではないかという臆測について「私がすでに他で(監督就任の)サインをしたと、あなた方が考えているとしたら、それは間違いだ。今のところ、私には何もない」ときっぱり否定。だが「おそらく、いつか(他の場所でサインをするだろう)。なぜなら、私は常に熱狂的で、意欲的であるからだ」とコメント。67歳だが、意欲は日本にいた時と全く変わらず、衰え知らずだ。(松本愛香通信員)