新天地アゼルバイジャンでデビューした本田圭佑が、かなり高い目標を自らに課し、第1歩を踏み出した。なじみのない国、リーグで本田は何を考え、どう進もうとしているのか。取材で印象に残った言葉から、考えてみる。

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本田は、4日にアゼルバイジャン・プレミアリーグ(1部)の強豪ネフチでデビューした。ホームでのスムガイト戦で0-2の後半開始から途中出場。試合はそのまま、0-2で敗れた。

試合後の日本時間5日、プレミアム音声サービス「NowVoice」で日本の報道陣の囲み取材に応じ、年齢制限外のオーバーエージ枠での東京五輪日本代表入りと金メダル獲得へ、残り「7戦8発」を自らに課した。

本田ネフチは、いきなりつまずいた格好だ。8季ぶり優勝へ、ラストスパートの切り札として迎えられた背番号4の助っ人は、トップ下の攻撃的な位置でプレー。効果的なパスと正確なCKはあったが、得点に絡むことはできなかった。

地元メディアからは「まだ時間が必要」。こう評されたが、時間はない。契約は5月末まで。この試合を含め8試合だけプレーし、チームの優勝と個人の東京五輪切符をつかみ取らなくてはならない。残りは7試合だ。

取材で、本田は「8試合で1試合1点を目標にここに来た。これが、アゼルバイジャンで僕が出すべき結果。それで(東京五輪日本代表に)選ばれなかったら、しょうがない」と口にした。

ロシアW杯後は、ボランチを主戦場としてきたが、これも修正した。「ボランチだったら、(監督の)森保さんが僕を選出する可能性が遮られてしまう気がする。考えを変えてトップ、トップ下とかセカンドストライカーとか。1発欲しいとなった時、最後決める、決めないは勝負強さが必要。そのへんのコマとしてやりますよということ。ここでそれを証明しなきゃ、どうしょうもない。数字にコミットしたい」とした。

あくまで、選出はあきらめていない。公式戦出場は、ブラジル1部のボタフォゴで負傷した昨年12月19日のコリチーバ戦(アウェー)以来実に約3カ月半ぶりだった。「サッカー選手として、プレーできたことは幸せ」と初心にかえった。

なじみのないアゼルバイジャンは、リーグの立ち位置の指標となる欧州連盟(UEFA)の国別のランキングで26位。浅野拓磨(パルチザン)のセルビア16位や、香川真司(PAOK)のギリシャ20位より下位。だからこそ、「今まであきらめていた、割り切ってみたことを、ここのレベルでは挑戦してみたい」と、よりゴールに迫る動きを追い求める。

ここ数年は、まるで旅人のように、短期間で移籍を繰り返し、世界を渡り歩く。出身地を「アース(地球)」と言い切り、宇宙に目を向けて生きる規格外の男。ネフチとの契約満了、そして東京五輪代表入りに決着がつくこの夏の身の振り方についても聞かれた。「どこでプレーするのか、そもそも現役を続けるのか、まだ発言はしたくない」と含みを持たせた。

新天地で自ら課した「7戦8発」。本来「8戦8発」だったが、いきなり失敗した。それでも、厳しいハードルに、あえて向かっていく。クリアしても、東京五輪切符が手に入る保証は一切ない。それでもこの数字をよりどころに、ひとまず、新天地でのスタートを切った。

1試合、1試合、カウントダウンしながら、そのプレーぶりをチェックしてみたい。【八反誠】