チェルシー(イングランド)がレアル・マドリード(スペイン)を2-0で下して2戦合計3-1とし、優勝した11-12年大会以来3度目の決勝進出を決めた。昨季はパリ・サンジェルマンを準優勝に導いたトゥヘル監督が、今季途中に就任してチームを再生した。29日にイスタンブールで行われる決勝は、マンチェスター・シティーと対戦、大会史上3度目のイングランド対決になる。

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新生チェルシーらしい勝ち方だった。ボール支配は相手に譲っても、素早い寄せと組織的守備で簡単にはペナルティーエリア内に入らせない。「苦しくても、貪欲さや守備への意識は失わなかった」とトゥヘル監督は納得顔。タレントぞろいのRマドリードを完封した。1月26日の就任以来、公式戦24試合中18試合で無失点という堅守だ。

前半28分、ハフェルツのループシュートがバーにはね返されたところに、ウェルナーが詰めて頭で押し込み先制。後半は好機があっても加点できない時間帯が続いた。なかなか突き放せないのも「らしさ」だった。やっと後半40分にマウントが加点し、勝負を決定づけた。「もっと早くもっと多く得点し、安全に試合を運ぶこともできたはず。でも、今はそれを批判する時ではない」と、指揮官は結果を素直に喜んだ。

ランパード前監督が才能重視の情熱家だったのに対し、トゥヘル監督は戦術家だ。守備を強化するべく、「能力で劣っても、運動量でカバーできる」と、特にボールのないところでの組織的な動きを徹底。それは選手起用にも反映された。出番を失っていたドイツ代表DFリュディガーを登用し始め、この日も大活躍だった。

一方で積極的に対話し、選手のやる気を引き出すのもうまい。今季加入のウェルナーは当初結果が出ずに批判されていたが、「トゥヘル監督が多くのアイデアを与えてくれた」と、アシスト増を含め、自信と自分の居場所を再確認した。

トゥヘル監督にとってはパリSGを追われて着いた新天地で、昨季の“雪辱”を果たせるか。決勝の相手はマンCで、8日にはプレミアリーグで対戦する。敵将グアルディオラ監督との駆け引きが始まる。

◆ドーマス・トゥヘル 1973年8月29日生まれ、西ドイツ(当時)クルムバッハ出身。現役時代はDF。アウクスブルクのユースなどを経て、92年に当時2部だったシュツットガルター・キッカーズに入団。その後、所属したウルムが2部昇格を決めた98年に膝のけがのため24歳で引退した。シュツットガルトのアカデミーで指導を開始し、09年にマインツの監督として初めてトップチームを率いた。その後、ドルトムント、パリ・サンジェルマンを経て、今年1月にチェルシーの監督に就任。ドルトムント時代にドイツ杯1度、パリSGで国内リーグ2度、フランス杯を1度制した。

◆欧州CL決勝アラカルト

▽3度目 イングランド勢同士の対戦は07-08年シーズンのマンチェスターU-チェルシー(1-1からのPK6-5でマンUが優勝)、18-19年シーズンのリバプール-トットナム(2-0でリバプールが優勝)に続き3度目。

▽8度目 同国勢同士の対戦は通算8度目。イングランド以外ではイタリア、ドイツが1回ずつ、スペインが3回。Rマドリード-Aマドリードは13-14年、15-16年と2度戦った。

▽別のクラブで チェルシーのトゥヘル監督は昨季、パリ・サンジェルマンで準優勝。別クラブを率いて2年連続で決勝進出した監督は史上初。

▽監督交代 チェルシーは3度目の決勝進出だが、過去の2度(07~08年、11~12年)もシーズン途中で監督交代した。

▽男女は初 チェルシーは女子も欧州CLで決勝に進出しており、男女同時は史上初。