<スコットランドリーグ:レンジャーズ1-0セルティック>◇9日◇グラスゴー

 【グラスゴー(英国)9日=塩畑大輔】MF中村俊輔(30)が率いるセルティックは、レンジャーズとのダービー戦で0-1と敗れて、首位の座を明け渡した。中村は寒さと水浸しの重いピッチでのプレーで、右股(こ)関節の痛みが悪化。ハーフタイムに痛み止めの注射を打ちながらの強行出場で、何度も好プレーをみせたが、チームに勝利をもたらすことはできなかった。セルティックは勝ち点2差の2位に後退。中村は12日ダンディーU戦の出場が難しいとみられ、6月のW杯予選への影響も懸念される状況に陥った。

 中村は敗戦の笛を聞くと、ピッチ上の誰よりも早くロッカー室に引き揚げた。伝統のダービーに負けた悔しさからではない。「ハーフタイムに、足の付け根の痛みがひどくなったので、痛み止めの注射を2本打った」。試合前に打つことはあっても、試合中に打つのは異例中の異例。試合後に、一刻も早い処置が必要で、悔しさに打ちひしがれる暇はなかった。

 この試合に懸けていた。中村は今季限りでセルティックとの契約が切れる。オールドファームダービー出場も、今回が最後の可能性が高い。しかも4連覇への鍵を握る大一番だ。勝てば13日にも優勝が決まる可能性があった。股関節の痛みをとるため、2日のアバディーン戦終了直後から4連休をとって備えてきた。

 試合に入っても、痛みを感じさせないプレーを見せ続けた。前半16分には、右サイドの角度がないところから、直接FKでゴールを脅かした。レンジャーズGKアレクサンダーが、かろうじて指先でゴール上方にはじき出す、惜しい一撃だった。落ち着いたボールさばきに加え、運動量も豊富だった。再三スライディングタックルでピンチも防ぎ、視察した日本協会の原技術委員長も「これだけ激しい試合の中で、よく体を張っていた」と絶賛した。

 中村本人も「こっちが7割くらいボールキープできた。内容は今までのダービー戦の中で、一番よかった」と話した。

 だが好プレーの代償は大きい。股関節の痛みは「ダンディーU戦には、出られるかどうか分からない」というまでに悪化してしまった。6月のW杯予選に影響する可能性もある。チームは残り3試合で勝ち点2差を追う立場になり、4連覇は苦しくなった。セルティックにも中村にも、日本代表にも暗雲が立ち込めた。

 [2009年5月10日8時33分

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