<ロシア1部リーグ:CSKAモスクワ1-0アムカル>◇12日◇モスクワ

 CSKAモスクワの日本代表MF本田圭佑(23)が、新天地で衝撃デビューを果たした。アムカルとのロシア1部リーグ開幕戦で、0-0で迎えた後半ロスタイムに、決勝ゴールを決めた。慣れないボランチでの起用も、前線から守備ラインまで走り回って与えられた役割をこなした。昨年末、オランダリーグのVVVから移籍。08年の欧州挑戦から確実にステップアップしているレフティーが、また1つ大きな足跡を残した。

 ゴールのにおいが本田を突き動かした。0-0の後半ロスタイム。右クロスをゴール前で相手DFと競った。こぼれ球はFWギジェルメの足元へ。「コイツはシュートを打つ。絶対にセカンドボールがある」。シュートのこぼれ球を右で拾ったFWネチドが再びクロス。オフサイドぎりぎりで待ちかまえた本田が飛び込み、左足で押し込んだ。ゴール後は全速力で駆け寄ってきたMFママエフに押し倒され、6人に飛び乗られる手荒な祝福を受けた。

 公式戦3戦目、リーグ戦初戦は、本田自身も予想しなかったボランチでの先発だった。自陣ゴール近くまで戻って守備をし、直後には前線まで駆け上がった。与えられた役割を果たし、ゴールへの意欲も失わなかった。クラブの公式サイトのインタビューに英語で「慣れないポジションだから、試合前は少し不安だった。でも、自分の仕事に集中しただけ」と胸を張った。自らのゴールには「重要なのはホイッスルが鳴るまであきらめないこと」。格下の相手に負けられないという執念で決勝点を生んだ。

 W杯まで半年を切った昨年12月、本田は日本ではなじみの薄いロシアへの移籍を決断した。「相手には驚いた。ロシアリーグはタフだし、守備が激しい」とこの日の試合を振り返った。それこそが望んでいた環境だ。VVV時代、体の大きいオランダ人に徹底マークされると自由に動けなくなった。フィジカルの弱さを痛感した。本田の選択は、もっと激しい環境での戦いだった。大男がそろうロシアリーグの環境が、自分を成長させると考えた。

 もちろん重圧もあった。移籍金900万ユーロ(約10億8000万円)の4年契約で迎えられ、周囲の期待は高い。試合後、自分のホームページに「いろんな大事な要素を含んだ試合やったけど、その中でも一番大事な部分があった。それは(スルツキー)監督と選手からの信頼を得ることやってん」と書き込んだ。

 クラブの公式サイトのインタビューでは、ロシアでの日本人史上初ゴールをたたえられた。「ボクにとっては、たいしたことではない。チャンピオンズリーグで勝つことに比べたら何でもないこと。そうなったら本当にうれしいですね」と返した。16日にはセビリアとの欧州CL決勝トーナメント1回戦第2戦がある。第1戦は1-1で引き分け、次はアウェー戦と楽な状況ではない。それでも、今の本田には、何かをやってくれそうな勢いがある。

 [2010年3月14日9時2分

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