<欧州CL:インテルミラノ3-2Bミュンヘン>◇決勝トーナメント1回戦◇15日◇ミュンヘン

 【15日(日本時間16日)=中野吉之伴通信員】インテルミラノ(イタリア)のDF長友佑都(24)がプレーで、東日本大震災の被災者へ「絶対にあきらめるな」というメッセージを送った。Bミュンヘン(ドイツ)戦の後半42分から欧州CL初出場を果たした長友は、同43分の決勝ゴールを演出。この試合を勝って2戦合計3-3とし、アウェーゴール数で上回って8強進出。ホームでの第1戦に敗れる苦境を、アウェーの2戦目でひっくり返したのは大会史上3チーム目だった。日本人の8強進出は、昨季のMF本田圭佑(CSKAモスクワ)、今季のDF内田篤人(シャルケ)に続く3人目だ。

 奇跡の大逆転8強進出を決めた長友は、サポーターに日の丸を掲げた。「どんなに離れていても心は一つ。一人じゃない!

 みんながいる!

 みんなで乗り越えよう!

 You’ll

 never

 walk

 alone.」と手書きされていた。その瞬間、スタジアムにはサッカー応援歌として有名な「You’ll

 never

 walk

 alone」が響いた。偶然にも古巣の東京の試合で流れるのと同バージョン。「頼んでないです。でも、何かつながっているなって思う」。長友の強い気持ちが奇跡を呼んだ。

 CLデビューからわずか1分で結果を出した。MFスナイダーのロングパスに猛ダッシュをかけると、ボールを受けたFWエトーとクロスするようにゴール前に駆け込み、相手DFを引きつけた。長友のおとりでフリーになったFWパンデフが決勝点。「勝てたのはすごくうれしいです。でも、今日は勝敗よりも大事なことがあった。心ひとつにして最後まであきらめないって姿勢を日本のみなさんに見せることだった」。

 この日はベンチスタート。アップ中も被災地のことが頭から離れなかった。「状況は聞いていた。何としても、そういう人たちのためにっていう思いだった」と気持ちを高めた。

 周囲のサポートにも感謝した。試合開始前にはピッチ上に日本語で「私たちは日本の皆さまと共にいます」と両軍からのメッセージが書かれた横断幕が掲げられ、震災犠牲者への黙とうが行われた。エトーは先制ゴール後に控えの長友に駆け寄った。レオナルド監督は1点が必要な場面でサイドバックを交代する異例の采配で長友への信頼を示してくれた。「世界がこれだけ日本のことを心配してくれる」と仲間の思いやりを力に変え、結果を出した。

 「You’ll

 never

 walk

 alone」。君はひとりぼっちじゃない。長友は欧州最高峰の舞台から、プレーで被災者たちに勇気と元気を送り、ともに戦うつもりだ。

 ◆You’ll

 never

 walk

 alone

 1945年に書かれたブロードウェーミュージカル「回転木馬」のために作られ、オスカル・ハマースタイン2世が作詞、リチャード・ロジャーズが作曲。60年代にリバプールのバンド、ジェリー&ザ・ペースメーカーズがヒットさせ、地元リバプールが応援歌として採用。セルティックや東京などのクラブのサポーターにも歌われている。