<ブンデスリーガ:ケルン1-6ドルトムント>◇25日◇ケルン

 ドルトムントの日本代表MF香川真司(23)の「欧州株」が急騰した。ケルン戦で勝ち越しのダイレクトボレーなど2ゴール、1アシストと大活躍。チームを大勝に導いた。2戦連発で今季通算11得点とし、06-07年シーズンの高原直泰(当時フランクフルト)に並ぶ欧州1部リーグ日本人最多得点に並んだ。チームも首位を堅守。スペイン紙が「日本のメッシ」と報じるなど価値は急騰の一方で、自らの力で今夏の移籍市場での夢のビッグクラブ移籍を実現させそうな勢いだ。

 スーパーゴールから一夜明け、香川の「欧州株」が急騰した。ドイツのサッカー専門誌キッカーは「後半はプレーに楽しさが見られた」と評し、今季3度目となる今節の週間MVPに選出した。「香川は日本のメッシ」と報じたのはスペインの一般紙エルパイス。「技術があり、ネズミのような素早さを持つ選手であることに議論の余地はない。メッシと比較できる選手だ」。FIFAバロンドールを3年連続受賞中のスーパースターと比較された。

 81分間のプレーはあらためて香川の欧州での高評価を不動にし、さらに上昇させた。1-1の後半2分、角度のない右サイドからダイレクトボレーを押し込んだ。「『最初のチャンスを決める』と、自分に問い掛けて後半に臨んだ」。これで波に乗ると、同33分にはDFの裏のスペースに走り込み、ギュンドガンのゴールをアシスト。その2分後にはピシュチェクのパスを押し込んだ。

 得点ランクも9位に浮上した。シーズン11得点はあの中田英を上回り、高原直泰がフランクフルト時代の06-07年にマークした、欧州1部リーグでの日本人最多得点に並ぶ大記録。首位を快走するチームで11点、7アシストと攻撃の大黒柱として活躍。週間MVPどころか、今季のリーグ最優秀選手に最も近い存在になってきた。

 翌26日、ドルトムントで開催中の卓球・世界選手権に、テレビ東京の特別ゲストとして訪れた香川は、好調の理由について「コンディションとメンタルがすごく充実していることが理由です」と話した。今夏の移籍市場でも目玉になりそう。既にマンチェスターU、アーセナルが獲得を打診したと報じられている。ACミランも興味を示している。スペインでも大きく報じられたことで、Rマドリードやバルセロナが名乗りを上げても不思議ではないが、本人は「それは僕には分からないですよ」と、照れ笑いを浮かべて言った。

 年俸大幅アップ提示で慰留に努めるドルトムントとは、契約延長には至っていない。もともと経営が苦しく、価値が急騰中の香川を引き留めることは難しくなってきている。キッカー誌も「今ドルトムントで彼ほど希望と不安を提供している選手はいない」と報じた。香川がゴールを奪うたび、ビッグクラブ移籍が現実味を帯びてくる。【鈴木智貴通信員】