日本代表のFW香川真司(23=ドルトムント)が、プレミアリーグの名門マンチェスターUに移籍することを5日、両クラブが発表した。同クラブへの移籍は日本人初。現在は代表合宿中のため、W杯アジア最終予選オーストラリア戦(12日、アウェー)後に現地に渡り、正式サインをする。移籍金は推定で最大約22億円、3~5年の複数年契約になる見通し。欧州で大きな夢をつかんだ香川は、プレミア最多19度の優勝を誇る世界屈指のビッグクラブから、14年W杯ブラジル大会に挑む。

 世界の超一流クラブの扉を開いた。この日マンチェスターUが、香川獲得について、所属のドルトムントと基本合意したと発表した。香川は現在、代表合宿中のため、6月のアジア最終予選3連戦の最後となる12日オーストラリア戦後にマンチェスターに渡る。

 VIP待遇になる。マンU側は1年半以上も調査を続けてきた。今年5月のドイツ杯決勝・Bミュンヘン戦にはファーガソン監督自らドイツに足を運んで誠意を示し、先月15日には香川をマンチェスターに呼んで起用法まで伝えた。プレミア王者マンC、欧州王者チェルシー、アーセナル、セリエAのACミランなどとの争奪戦になったため、必死だった。過去にベッカム、Cロナルドら世界的スターが在籍したマンUへの移籍は日本人初。欧州のシーズンが終わったばかりの6月に合意するのは、移籍市場の目玉選手である証しだ。

 移籍金は推定で1700万ユーロ(約17億円)+出来高で最高2200万ユーロ(約22億円)に達する。年数も3~5年の超大型契約になる見通し。12年の米経済誌フォーブスによると、マンUは資産価値約22億ドル(約1760億円)で8年連続サッカークラブ世界一。かつて日本人で、これほどのクラブから、これほどの好待遇で迎えられた例はない。

 日本を背負って戦う責任感からか香川はこの日、多くを語ることはなかった。

 「完全な合意はまだしていません。交渉はしていますけど、ボクがサインしていない。代表戦があと2試合あるので、そこに向けてチームメート全員が集中している。できれば代表の後に話をしたい」

 一方で、突然の合意発表になったため、所属事務所も困惑した様子だった。担当者は「今は本人が代表合宿に集中している時期ですので、それ以上の話はできません」と説明。今後は代表戦後にメディカルチェックと、英国の労働許可証を取得するなど、諸条件のすり合わせを経て今月中旬にも正式サインする予定だ。

 高校2年でC大阪とプロ契約した際は、それほど注目される存在ではなかった。同期入団には天才と呼ばれた柿谷(C大阪)がいた。プロ1年目の06年は公式戦出番なし。その頃、C大阪に在籍していた元日本代表MF名波浩や山田卓也ら、10歳以上も年の離れた選手らと、毎日のように夕暮れのグラウンドを走る姿があった。ようやくプロで出番に恵まれた時、C大阪はJ2。血と汗がにじむ努力でここまではい上がった。

 マンUで定位置をつかめば、日本人初の欧州チャンピオンズリーグ制覇も現実的になる。その先には14年W杯。憧れのバルセロナ移籍も夢見る。世界の頂点を目指し、香川の夢は果てしなく広がる。

 ◆マンチェスターU

 マンチェスターの鉄道員が中心となり、1878年に創立。67-68年の欧州チャンピオンズ杯(欧州CLの前身)で初優勝。その後低迷するが、86年にファーガソン監督が就任し、若手育成に成功するなどで復活。主なタイトルは欧州CL3回、クラブW杯(トヨタ杯時代含む)2回。12年の米経済誌フォーブスの調査によると、資産価値は約22億ドル(約1760億円)で8年連続サッカークラブ世界一。本拠地オールドトラフォードは7万6312人収容。愛称「赤い悪魔」。