ベッカムは美学を貫いてピッチを去る。元イングランド代表主将MFデービッド・ベッカム(38=パリサンジェルマン)が今季限りでの現役引退を表明、英スカイスポーツで心境を語った。引退を意識した瞬間を「メッシに抜かれた時」と冗談交じりに振り返りつつ、チャンピオンとして身を引くことを選んだと強調。私生活などピッチ外の話題も多かったが、献身的プレーを信条とするサッカー選手としての誇りをにじませた。

 ベッカムはボロボロになるまで現役にしがみつくより、トップ選手のまま幕を引くことを選んだ。「以前からそう決めていた」という。今年、パリサンジェルマンに移籍し、正確なパスやクロス、献身的な守備などで優勝に貢献。チームは成長著しく、FWイブラヒモビッチは「ベッカムとともに、来季こそ欧州チャンピオンズリーグ(CL)を制したい」と話すなど、信頼も厚かった。「まだトップレベルでプレーできるので難しい決断だった」。葛藤もあったことを明かした。

 きっかけの1つは、欧州CL準々決勝で対戦したバルセロナFWメッシだったようだ。「引退を考えたのは?」という問いに「メッシに抜かれたときかな」と答えた。インタビュアーがマンチェスターUでもイングランド代表でも「戦友」だったG・ネビル氏だったこともあり、冗談めかした口調だった。だが、現在世界NO・1選手を相手に、自分はまだトップ級ではあってもバロンドールを目指す選手ではないと、感じたのも事実だろう。

 続けて「チャンピオンとしてやめたかった。だから今、引退しようと思った」と強調した。今季は米MLSギャラクシーで優勝し、フランスリーグも制した。異なる2リーグで王者になるという、他の選手では達成できない偉業。あくまで美しくピッチを去るため、決断が早まった。

 「どんな人間として記憶されたいか?」という質問には、「ハードワークをするサッカー選手として」と自負を見せた。ファッションや私生活の話題が先行することも多く、「色眼鏡で見られてきた」とも。プレーへの評価が正当でないこともあり、「そんなことで傷つかないと言ってきたけど、やはり傷ついた」と打ち明けた。右足のキックがうまいだけでなく、ベッカムは常に懸命に走り続け、肉弾戦に果敢に挑む選手だった。イングランドサッカーの誇りも最後まで貫いた。

 ◆デービッド・ベッカム

 1975年5月2日、英国生まれ。マンチェスターU、Rマドリードなど各国の名門に所属、4カ国で優勝を経験。イングランド代表では主将も務め、98、02、06年W杯に出場、計115試合17得点。正確なキックを武器とし、端正なマスクから「貴公子」とも呼ばれ、日本のCMにも多く出演。ソフトモヒカンの髪形など流行させた。家族は元スパイス・ガールズのビクトリア夫人と3男1女。183センチ、74キロ。