<セリエA:カリャリ1-2ACミラン>◇26日◇カリャリ

 ACミランのMF本田圭佑(27)が、劇的勝ち越し弾をアシストした。アウェーのカリャリ戦で中盤の右サイドに入り、リーグ戦2試合連続で先発出場。本田は3度の決定機を外すなど劣勢の展開となったが、後半44分に自ら蹴ったCKを、FWパッツィーニが右足で決めて逆転に成功した。移籍後初のフル出場で、初アシストを記録。チームは競り勝ち、リーグ2連勝とした。

 喜んだのは一瞬だけだ。長いロスタイムが終わり、試合終了の笛が会場に響く。劇的逆転勝利に喜ぶ仲間には目もくれず、本田はさっさとピッチを引き揚げた。イタリアとスペインのちょうど真ん中。地中海に浮かぶサルデーニャ島南部のカリャリは、空は晴れていたものの強風がピッチに吹いていた。本田の心は「雨のち晴れ」といったところだろうか。ビッグチャンスを外し、最後の最後で移籍後初アシストを記録した。

 見せ場は3度、あった。前半18分。ハーフウエーライン付近から全力で駆け上がり、1トップの悪童バロテリを追い越した。相手DFの裏に飛び出すと、右寄りにいた悪童から絶好のパスが転がってきた。利き足ではない右足ダイレクトで放ったシュートは、GKの足に当たってラインを越えた。同39分には右後方からのクロスを、ドンピシャ頭で合わせた。いずれもGKの好守に阻まれた。さらに後半14分には中央をドリブルで切り裂き、ロビーニョとのワンツーで抜け出した。左足シュートは枠の外。運にまで、見放された。

 「本田の日」ではないのか…。敗戦も頭をよぎった終盤。後半42分にバロテリがFKを直接沈めて1-1の同点。すると、その2分後だ。本田がCKスポットに入った。強風でボールが落ち着かない。1度、置き直してから蹴った球は、風に乗ってゴール前へ飛んでいった。それをDFと競り合いながら、FWパッツィーニが右足ダイレクトでたたき込んだ。劇的決勝弾だ!

 本田は仲間と抱き合って、大喜びした。

 今月途中から指揮を執るクラレンス・セードルフ新監督(37)の信頼も得つつある。前日25日の会見で指揮官は「(本田の)コンディションはいい。重要なことはプレーする準備ができているということだ」と説明。さらに「日本人なので最後まで諦めない精神を持っている。この精神は私たちの助けになるだろう」と、低迷するチームの救世主に指名した。

 期待を裏切らない男は、リーグ戦2連勝を演出した。3度のビッグチャンスを逃しはしたが、辛うじて面目を保った。【波平千種通信員】