第83回箱根駅伝往路 順大5区今井正人は3年連続の区間賞で往路優勝する=07年1月2日(撮影・鹿野芳博)
今年の箱根駅伝で注目を浴びた2人は、既に「世界」を見据えていた。5区の3年連続区間賞で順大を完全優勝に導いた今井正人(4年)と、1区の区間新記録を出した東海大の佐藤悠基(2年)が、そろって金栗四三杯(最優秀選手)を獲得した。異例のダブル受賞会見で、3年連続MVPの今井は「今後は日本のマラソンを盛り上げられる選手になりたい」と話した。佐藤も「今夏に大阪世界陸上、来夏は北京五輪と世界大会が続くので頑張る」と、トラック長距離種目の代表争いに名乗りを上げた。
早大の瀬古利彦など、過去の箱根のスターには大学時代からマラソンで活躍する選手がいた。同じように、いきなり世界の舞台で勝負できる逸材は近年、登場していない。それどころか、箱根駅伝で燃え尽きてしまう選手が目立つ。注目と期待を集め、重圧から無理がたたり、在学中から故障に苦しむケースも多い。
その点、今井と佐藤は大きく成長しそうな可能性を秘めている。今井は今年も衝撃的な走りを見せた。トップとの4分9秒差を逆転する区間新の4人抜きで逆転の往路V。2年は11人、3年の5人と計20人抜きで、最強クライマーとして箱根の歴史に名前を刻んだ。
マラソンの30キロ以降の駆け引きに耐えられる精神力は、簡単に身につかないといわれる。だが今井は箱根の山登りで、それに通じる我慢強さを証明した。今後の課題はスピードの強化だ。1万メートルの自己ベストは28分57秒93で、昨季の大学生ランキングでは29番目。スピードは天性の要素でもあるが、今春から今井を指導するバルセロナ五輪銀メダリストでトヨタ九州の森下広一監督は「腰の入った走り方ができると、もう1段速くなる」と見ている。現代の高速レースについて行く耐久性を備え、終盤にスパートできる切れ味が備われば、持ち味の精神力で勝負できる。近年、山登りから大成した選手は少ないが、今井がどこまで成長するか見ものだ。
第83回箱根駅伝 最優秀選手に選ばれ表彰される東海大・佐藤悠基(中央)と順大・今井正人(右)=07年1月3日(撮影・鹿野芳博)
1区を制した佐藤の走りも別格だった。スタートから飛び出して「怪物」と呼ばれた早大の渡辺康幸(現早大監督)の区間記録を13年ぶりに更新。昨年の3区に続く2年連続の区間新を達成した。残り2年間で、花の2区など記録を総なめにする可能性は十分ある。
既に、トラックでは日本トップの実力を発揮している。昨年4月の兵庫リレーカーニバル1万メートルで、昨季日本人最高の28分7秒02をマーク。同8月には初の欧州遠征で5000メートル日本歴代6位となる13分23秒57を出して、世界選手権B標準記録(13分28秒00)を突破した。トラックではアフリカ勢との実力差は歴然も、スピードを磨いてマラソンに転向すれば世界トップと高速レースで互角に戦えそうだ。
2人は男子マラソン再興の「起爆剤」として期待される。大きな故障もなく、箱根から世界の舞台へ大きく羽ばたいてほしいと、誰もが願っている。【佐藤智徳】
- 佐藤 智徳さとう・とものり
- 青森県生まれ。日刊スポーツ新聞社入社後、北関東支局を経てスポーツ部へ。バトル、大相撲、一般、モータースポーツなどを担当。42歳。
※本連載は毎週木曜日更新予定です


