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特別連載 THE OTHER SIDE




ホーム > 特別連載 THE OTHER SIDE > 第12回 デビッド・ベッカム


デビッド・ベッカム 「客寄せパンダ」は見たくない

親善試合 東京V対Rマドリード 前線にロングパスを送るMFデビッド・ベッカム=05年7月25日(撮影・越田省吾)親善試合 東京V対Rマドリード 前線にロングパスを送るMFデビッド・ベッカム=05年7月25日(撮影・越田省吾)

 1月11日深夜、世界を揺るがす大ニュースに社内も揺れていた。「RマドリードMFデビッド・ベッカムが、MLSのロサンゼルス・ギャラクシーに移籍」。ただ、ヒートアップする周囲と相反するように、割り切れなさを感じていた。2週間前に目の当たりにしたベッカムの、いつも変わらない笑みが頭に浮かんだからだ。

 昨年12月29日、プロモーションで来日したベッカムに密着した。朝6時10分に到着したが「着替えたい」と30分以上も飛行機から降りてこず、ようやく出てくると真冬には寒すぎるTシャツにボレロのスタイルだった。お昼のお台場のイベントでは海風が吹き付ける中、薄手のブルゾンを着て首にマフラーを巻いたが、ボタンを開いた白シャツから胸がはだけていた。

 その後六本木、渋谷でもイベントを繰り返したが、さすがに寒かったのだろう。足をガクガク震わせる場面もあった。それでも体の線を消すような、やぼったい格好はしなかった。抽選で当たった女性にキスまでして、わずか13時間で日本を後にした。男から見ても、憎らしいほどの笑みは最後まで変わらなかった。

 そんなベッカムを見続けるうちに、ふと思った。「果たして、この先どこに行くんだろう」と。残留、母国イングランドへの復帰、セリエAに米国…。進路の候補が頭の中をめぐったが、どうもピンとこなかった。それはベッカムをサッカー選手として見ることができなくなっていたからだ。

来日し携帯電話会社のイベントに出席したデビッド・ベッカム=06年12月29日(撮影・柴田隆二)来日し携帯電話会社のイベントに出席したデビッド・ベッカム=06年12月29日(撮影・柴田隆二)

 75年5月に英国ロンドン北東部のエセックス州に生まれ、労働者英語「コックニー」で話す、あか抜けない少年だったベッカム。それが89年5月にマンチェスターUの下部組織に入団して人生が変わった。ファーガソン監督の下、メキメキ頭角を現し92年9月にトップデビュー。96年にはイングランド代表に選出され、3度のW杯に出場した。

 その間、99年に結婚したビクトリア夫人の「プロデュース」を受け男に磨きをかけると、プレー以上にそのスタイルや挙動に注目が集まった。髪形を変えるだけで世界中の女性を虜(とりこ)にするベッカムは、もはや一サッカー選手ですらなくなっていった。

 次の行き先は米国ロサンゼルス。既にハリウッド進出のうわさまで出ている。右足から繰り出される鋭いクロスで、世界を席巻した姿は、残念ながらもうない。それでも、アメリカ人にあの笑みを振りまくのだろうか…。サッカー人生晩年に差し掛かったベッカムの「客寄せパンダ」姿を見るのは、あまりに寂しすぎる。【村上幸将】

村上 幸将むらかみ・こうすけ
北海道出身。日刊スポーツ入社後、整理部、静岡支局を経てスポーツ部に配属。現在はおもに海外サッカーを担当。32歳。

※本連載は毎週木曜日更新予定です



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