其之参 どんないい米でも、処理しにくければ使わない
米は春、苗代にまいた、もみに根や芽が出る。育って苗となり、田を耕して植える。1本の苗が幾本もの株に分かれ、8月初めに穂が出る。同月中頃には白い小さな花が咲き、10月に穂を刈り取る。この稲の種子を籾(もみ)と言い、籾殻を取ったものを玄米という。さらに精米にしたものを白米と呼ぶ。これが米づくりのサイクルだ。
この「白い花」は玉乃光酒造のホームページでも掲載されている。よく晴れた日には午前9時頃に開き始め、真夏の特に同11時から正午の間に最も多く咲き、花が開くと同時に花粉袋が割れ、自らの雌しべに花粉がつく。受粉後、核が分列し開花の24時間後には約50個の胚乳核となる。天候が悪いと受精に2~3日かかる。
酒米の元祖「雄町」は、安政6年(1859年)現在の岡山県赤磐市で、岸本甚造氏により発見され、育成された。
「安政6年秋、稲作の増収には種子の善し悪しが大きく作用すると考えていた、岡山市雄町の岸本甚造氏は、大山に詣でる途中道端の田園に、良穂を見付け、これを移植して改良し、苦心惨憺(くしんさんたん)して、新種の雄町種を生み出した。米質は優良で粒が大きく味に優れ、ことに酒米種として最も愛用され、全国に普及した」(雄町米元祖 岸本甚造翁碑文より)
「雄町」の特徴として、
- 1)米粒がやわらかく大粒である
- 2)中心部にデンプンの粗な部分(心白)がある
- 3)日本酒づくりに不必要なタンパク質が、米粒の外側に多く、内側に少ない。従って精米することによりタンパク質を除くことができる
玉乃光では、有機栽培した「雄町」を使った純米大吟醸酒「有機雄町」という銘柄を販売している。有機肥料だけを使って栽培した雄町は、化学肥料で育てた酒米と比べると、日本酒づくりに不必要なタンパク質が数パーセント少なくなるという分析結果が出た。つまり、有機栽培した雄町を使うことによって、日本酒の味を鈍重にする成分を出すことがないので、より華麗な酒米を特徴とした日本酒をつくることができる。
酒米は乾燥、籾摺り後に出荷米の検査が行われ、その年度の米の等級が決まる。規定によって「容積重」「整粒」「形質」「水分」「被害粒等」を検査、格付けされる。だが、仮に最高の1等級を得たとしても松本杜氏は納得しないと言う。「どんないい米でも、原料として処理しにくければ使わない」。酒米としての資質はもちろん、酒造りへの影響も含め、米を厳しく評価する。いい米とは「(心白の)粒がそろった米」だという。よく異なる米で作った酒をブレンドして売る蔵があるが、玉乃光は一切しない。例えば「雄町」と「山田錦」それぞれの酒を混ぜないのだ。杜氏は「うちみたいに真面目に分けてつくる蔵は珍しい。ここまで真面目にね」。酒米は毎年多くの手間暇を掛けて日本酒へと姿を変えるが、玉乃光の酒が飲み手に感動を与える理由は、まさにこの米へのこだわりにあるのだろう。
◎麹米と掛け米
酒米を精白した白米は、その用途に、麹(こうじ)米と、掛け米という2種類に分かれる。麹(蒸米を30度に冷ましてこうじ菌を植え付け、50時間から55時間掛けて繁殖させたもの。こうじ菌のつくる酵素を利用して、もろみのデンプンを糖分に分解する)にする白米のことを、麹米という。さらに、麹にはモト(酒母ともいう。水、麹、蒸米をタンクに入れ、少量の酵母を添加し、増殖させたもの。約2週間でできあがり、もろみの仕込みに利用する)に用いるモト麹と、もろみ(タンクに、モト、水、麹、蒸米を投入されたもの。25日から30日掛けて発酵し、日本酒ができる)の仕込みに用いる掛け麹の区別がある。仕込とは、日本酒の醸造過程で、モトまたはもろみをつくる時に、モト、麹、蒸米などの原料を、一定のルールに従って混和し、処理することを意味する。
掛け米は麹米と対になる言葉で、蒸して酒母や三段仕込みに掛ける(加える)原料米のことです。
一般的な酒母造りである速醸もとには、掛米、麹米、酵母菌、乳酸菌、仕込み水が使われます。
三段仕込みは先人達が考えた日本酒の製造方法で、1回で全量を仕込んでしまうと酒母で純粋培養された優良酵母の濃度や酸濃度が薄まり、醪(もろみ)を腐敗させる雑菌の進入を許すことになるので、雑菌汚染に対する免疫力を高めるため三回に分けて仕込み、酵母数や酸度を増やしながらの仕込み方法です。


