井上君のレースは、完璧だった。走りに余計な動きがなかったし、32年ぶりの金メダルには価値がある。記録は良くないが、勝ち切ることが大事。暑さに強いということも証明できたし、彼にとってはすごく自信になったはず。オリンピック(五輪)に向けて、頭1つリードした。25キロくらいから園田君が前を引っ張ったのも良かった。前を見て走ることができたことで余裕を持てた。チームJAPANで勝ったと言ってもいい。

今回は東京五輪と日程がほぼ同じで、暑さ対策も含め、2年後に向けたシミュレーション的な大会でもあったが、しっかり答えを出してくれた。中間試験としては合格点。この時期のピークの持っていき方を見せてくれたのは大きい。井上君は昔の選手のように走り込むタイプ。今大会に向け、米国ボルダーで40キロ走などを多くこなしてきたと聞いたが、走りにバネがあり状態は万全だった。彼のようにやればという1つの指針になり我々にとってもいい勉強になった。それぞれやり方は違うとはいえ東京五輪を目指す上で他の選手にも参考になったと思う。

これから井上君にはタイムを狙ってほしい。地力をつけて、暑い時期と、寒い時期のタイムの落ち幅を少なくして安定感が増せば、2年後がさらに楽しみになる。(日刊スポーツ評論家)