<世界陸上>◇15日◇男子100メートル1次予選◇ベルリン五輪スタジアム

 【ベルリン15日=佐々木一郎】世界記録保持者ウサイン・ボルト(22=ジャマイカ)が、初の世界選手権制覇へ好発進した。9組に登場し、10秒20(向かい風0・5メートル)で余裕の通過。200メートル、400メートルリレーと合わせ、すべて世界新で制した08年北京五輪に続き、ボルトのショーが始まった。

 1次予選は、ウオーミングアップにすぎなかった。ボルトは50メートルを過ぎたあたりから、スピードを緩め、流してフィニッシュ。9組1着で、2次予選に進んだ。コメントを取ろうとする世界各国のテレビ局から声を掛けられるが、次のレースに備えて「エブリシング

 イズ

 オーライ。後で話す」とだけ言って、通りすぎた。

 記録は参考にすぎないが、10秒20で全体3位。偶然にも、北京五輪の1次予選と同タイムでの発進が、今後の爆発を予感させた。スタート前は、両手でVサインをつくってポーズを取るなど、陽気なキャラは今も健在。ベルリン入り後の会見で「非常に体調もいいし、自信過剰ってわけじゃないけど、自信を持っている」と話していた通り、順調に発進した。

 五輪王者として迎えた今季は、トラックの外でも話題が尽きなかった。4月29日には、母国ジャマイカで交通事故を起こした。雨中の高速道路でスピードを出しすぎ、愛車BMWが大破。だが大事に至らず、競技には影響しなかった。大リーグ・レッドソックス戦の始球式を務めたり、サッカー選手のC・ロナウドに走りを教えたりと、世界最速男は各方面に引っ張りだこだった。

 一方で、競技をおろそかにはしなかった。196センチの巨体ゆえ、苦手だったスタートも、改善してきた。6~7月にかけて、100と200メートル合わせて6戦全勝。100メートルは9秒79、200メートルは19秒59と、好タイムを残した。ライバルのゲイ(米国)には及ばなかったが、世界選手権での今季初対決に向け、右肩上がりに仕上げてきた。北京五輪の決勝でマークした世界記録9秒69は、破れるのか。ボルトの挑戦が始まった。