<箱根駅伝連載

 戦国駅伝:(4)新興大学編>

 注目されるのは伝統校だけではない。「新興大学」の青学大は10月の出雲駅伝で優勝し、3大駅伝で初のタイトルを手にした。04年に現在の原晋監督(45)が就任すると、09年には33年ぶりに出場、前回は総合5位と着実にステップアップ。今大会は東洋大、駒大の2強を脅かす存在に成長した。

 がらんとした教室に集まったのは、たった3人の学生だった。33年ぶりに青学大の出場が決まった09年大会前、学内でボランティアを募集したが、関心は薄かった。以来3年、優勝候補となった今大会は、すでに100人以上が集結。原監督は「AKB48の最初のライブも数人の観客しかいなかったといいますが、ありがたいことです」と期待を実感した。

 大学は03年に陸上部の強化を掲げた。指導者として、中京大と中国電力で選手だった原監督に白羽の矢が立てられた。原監督は選手引退後、10年間は中国電力の会社員として仕事に専念。新規事業を立ち上げ、ゼロから120人規模に成長させた実績を誇る。監督就任後は、サラリーマン生活の経験をいかし、学生に練習の意図を明確にし、具体的な目標を立てさせた。

 09年大会で復帰し、10年シード権を確保した。今年4月には周囲にクロカンコースを併設した専用グラウンドも完成と環境も整った。10月の出雲では初の3大駅伝制覇と、今大会は優勝候補に浮上した。飛躍の原動力は1年生。春先にケガ人が続出し、不協和音が生じたとき、入学したばかりの1年生が「下から勢いをつけよう」と結束。チームを1つにした。

 中でも、九州学院高時代から注目された久保田和真は出雲駅伝の3区でトップに立ち、チームの優勝に貢献。初の箱根では「2区を走りたい」と、昨年区間賞を取ったエース出岐雄大(4年)に挑戦状をたたき付けた。「今は不安よりワクワク感が大きい」と久保田。成長したチームに、実力派の1年生の加入。青学大が「新興大学」から強豪校への転換期を迎えた。【田口潤】

 ◆主な新興大学

 早大OBの指導者が目立つ。上武大は、04年に早大OBの花田勝彦氏が監督に就任。5年でチームを初出場させると、今大会で5年連続出場。城西大も09年4月に、早大OBの櫛部静二氏が監督になり、10年、12年とシード権確保に成功している。