陸上男子100メートルで未公認ながら日本人初の電気計時9秒台をマークした桐生祥秀(19=東洋大)が30日、8月の世界選手権(中国・北京)までに100メートルと200メートルのダブル日本記録達成を目標に掲げた。28日の米テキサス・リレーで追い風参考(3・3メートル)ながら9秒87の驚異的な記録で優勝し、成田空港に凱旋(がいせん)した。次戦の織田記念(4月18、19日・広島Eスタ)で、まずは公認記録での9秒台に挑む。

 桐生が「日本人最速」の看板を背負っての世界挑戦を宣言した。今年の最大目標は、8月の世界選手権。「8月までに100メートル、200メートルで日本記録を狙いたい。100だけと思われているけれど、200も走りたい」。日本記録は、98年アジア大会で伊東浩司(富士通)が記録した100メートル10秒00、200メートルは03年日本選手権で末続慎吾(ミズノ)がマークした20秒03。9秒台と19秒台を視界にとらえた自信の表れだ。

 追い風参考ながら9秒87を出した今大会。昨年9月、200メートルの競技中に左太もも裏肉離れを発症させ、約半年ぶりの実戦という中で大きな収穫を得た。「海外の選手とは緊張してベストの走りができなかった。記録よりも(12年ロンドン五輪5位の)ベイリーに勝ったことが大きい自信になった」と笑顔を見せた。

 今冬の鍛錬の成果も出た。高校時代はあまりやらなかった筋力トレーニングを始めた。重い棒を持ってバランス感覚を養いながらのスクワット。股関節の可動域を広げる柔軟体操。それによりスタートブロックの歩幅を約10センチ広げる筋力がつき、1歩目、2歩目が速くなった。ストライドも広がり、100メートルを48~49歩で走っていたものが、今回は47歩。同行した土江コーチも「1歩で約2メートル、0・2秒。それだけ縮まった」と分析した。

 次は2年前に10秒01の記録を出した、相性のいい広島での織田記念。「9秒台の感覚はいい感じで持てた。日本で公認記録(追い風2メートル以内)を出さないと」。「広島」と言えば、同じ日の30日付スポーツ紙1面は広島黒田投手の「おとこ気カープ復帰」に奪われた。次回も“ガチンコ勝負”となる可能性があるだけに「(負けないよう)頑張ります」。日本人初の公認9秒台突入で、さらなる大ニュースを狙う。【鎌田直秀】

<桐生 今年の主な大会(日程は予定含む)>

 ▼4月18、19日 織田記念国際大会(広島Eスタ)

 ▼6月26~28日 日本選手権(新潟デンカS)

 ▼8月 世界選手権(北京)