モンゴロイド(黄色人種)初の9秒台が…。男子100メートルで蘇炳添(25=中国)が9秒99をマークして3位に入った。黄色人種では初めて10秒の壁を破る快走。一昨年に日本歴代2位の10秒01を出した桐生祥秀(19)を筆頭に、9秒台を目指してきた日本にも衝撃が走った。

 赤いユニホームを身にまとった蘇が、最内の1コースから弾丸のように走り抜いた。スタートの号砲に勢いよく反応すると、173センチと決して大きくはない体を前傾させて速度を上げる。40メートル過ぎに上体を起こして1・5メートルの追い風を背中に受けると、後半までスピードは落ちない。最後は頭を前に押し出してフィニッシュ。9秒88で先頭でゴールした07年世界選手権覇者のゲイ(米国)にくらいつき、電光掲示板には「9・99」の数字が躍った。「この結果を誇りに思う。歴史に名を刻めた」と胸を張った。

 自己ベスト10秒06から一気にタイムを縮め、黄色人種として初めて10秒の壁を破った男になった。中国には13年世界選手権で10秒00を記録した張がいたが、「彼の走りを見て、10秒切りに近づけると思えた」と国内のライバルを刺激にしたという。今年の世界選手権は地元の北京開催。勢いに乗る25歳は「母国のためにまた奇跡を起こしたい」と誓った。