男子マラソンの復権は道半ば…。マラソン3度目の北島寿典(ひさのり、31=安川電機)が2時間9分16秒で日本人トップの2位、石川末広(36=ホンダ)が2時間9分25秒で同2位の4位に入った。最大3枠の代表は福岡国際の佐々木悟(30=旭化成)、北島、石川が有力となった。だがロンドン五輪後に掲げられた日本陸連の設定記録2時間6分30秒には程遠く、日本陸連の強化策はほぼ有名無実化。リオ五輪で厳しい戦いは避けられない。代表は17日の日本陸連理事会で決定する。

 レースは30キロ過ぎに動いた。日本人トップがめまぐるしく入れ替わる。北島がラスト1キロで石川を抜く。右脇腹を抑えながらも2月1日に生まれた長女、暖乃(はるの)ちゃんの存在を支えに走った。気温19・8度の悪条件で自己記録を3分以上も更新。「正直ここまでやれると思ってなかった」。選考3レースを終了してリオ代表は佐々木、北島、石川が有力となった。

 ただ本番では苦戦が予想される。3レースの日本人最上位にすべて一般参加だ。佐々木は所属先の子会社による「くい打ちデータ改ざん問題」で招待選手を辞退しての一般参加だったが、実績ある選手は総崩れだ。日本陸連がロンドン後に「世界と戦うため」に掲げた設定記録2時間6分30秒突破は0人。酒井強化副委員長は「そのタイムで走らないと世界で戦えないと浸透している」と話したが、結果的に2時間9分前後が「当確ライン」となった。

 14年4月に目玉として立ち上げたナショナルチーム(NT)も有名無実化した。当初はメンバーを優先的に日本代表に選ぶ代わりにNT合宿参加を求めた。だが15年7月の2期目に入ると優先権が消滅。川内が「このチームにいてもプラスにならない」とNTを辞退。この日、NTメンバーが選考会の日本人トップにいないことを指摘された酒井副委員長は「え、佐々木選手が…」と発言。佐々木は発足メンバーだったが、2期目は外れている。今季のメンバー7人は、選考3レースの代表候補9人の中に1人もいない。責任者がメンバー構成を勘違いするほど、影が薄くなった。

 92年バルセロナ五輪銀の森下以来メダルから遠ざかる男子マラソン。復活への道は険しい。【益田一弘】