世界記録保持者たちが注目された大会だが、男子800メートルのデービッド・ルディシャ(27=ケニア)は5位、110メートル障害のアリエス・メリット(30=米国)はフライング失格、棒高跳びのルノー・ラビレニ(29=フランス)も2位と相次いで敗退した。

 波乱含みの大会となったが、男子100メートルではジャスティン・ガトリン(34=米国)が、8日のゴールデングランプリ川崎に続いて快勝した。

 男子800メートルはアクシデントといっていい事態になった。スタートの号砲が鳴った直後に、8レーンのルディシャは驚いた表情で両手を広げて走りだした。9レーンのペースメーカーの選手は5~6秒後にスタートした。

 ルディシャは200メートルでトップに上がったが、本来レースを先導するはずだったペースメーカーは300メートル過ぎにやっと先頭に立つ予定外の展開。450メートル付近でペースメーカーが外れ、ルディシャが再度トップに出たが、最後の直線で優勝したファーガソン・ロティッチ(26=ケニア)らに次々に抜かれて5位に終わった。

 ルディシャは「私は怒っている」とレース後にコメント。「走り高跳びの選手がレーンに入っていたのにスタートが切られてしまったんだ」。

 映像を見ると走り高跳びの選手らしき人物が9レーンに立ち、ルディシャらの15メートルほど前でインフィールドに向かって両手を挙げて何かしら指示を出しているのだ。本来なら競技審判が、スタートを切る適正な状態にあることを確認してからスタートすべきところ。オリンピックや世界陸上なら間違いなく、抗議が出されていた。

 記録的には女子円盤投げでサンドラ・ペルコビッチ(25・クロアチア)が70メートル88のダイヤモンドリーグ新記録をマークした。昨年の世界陸上で敗れた五輪金メダリストは、「背中もヒザも足首も、どこにも故障がないのは、ここ何年かで初めて。でも、まだ最高の状態には仕上げていません」と、リオ五輪に向けてさらに調子を上げていくことを強調した。

 また、男子5000メートル、女子1500メートルと3000メートル障害で今季世界最高が誕生するなど、中・長距離種目で好記録が生まれた。気温が低めだったこともあり、短距離・跳躍種目の記録は低調に終わった。

 日本勢では男子やり投げに新井涼平(24=スズキ浜松AC)が出場したが、80メートル07で6位。ゴールデングランプリ川崎では84メートル41と好記録を投げていたが、その前の織田記念は78メートル07だった。安定性が今季の課題として浮上した。

 ◆今季の女子円盤投げ

 ペルコビッチが3月に70メートル59、そして上海で70メートル88と今季世界最高を連続でマークして好調だ。デニア・カバリェロ(26)とヤイミ・ペレス(24)のキューバ・コンビと、ダニ・サミュエルズ(27=オーストラリア)の3人が67~68メートルで続いているが、ペルコビッチが2メートル以上差をつけている。

 だが、昨年もペルコビッチは3月に投げた70メートル08がシーズンベストとなり、6月に70メートル65と記録を伸ばしたカバリェロが8月の世界陸上でも優勝した。

 ロンドン五輪金メダリストのペルコビッチが連覇をするには、昨年のように夏に調子を落とさないことだ。