陸上競技のダイヤモンドリーグ最終戦(第14戦)のバンダム記念が8日、ベルギー・ブリュッセルで開催される。リオ五輪金メダリストが6人出場するが、一番の注目は1万メートルに世界新で優勝したアルマズ・アヤナ(24=エチオピア)の5000メートル出場だ。また、ダイヤモンドリーグ実施32種目中、16種目の最終戦で年間ツアーチャンピオンが決定する(半数の16種目は1日の13戦チューリヒ大会で決定済み)。

 世界記録(14分11秒15)更新も期待されるが、アヤナにとって今大会はリベンジの意味合いが大きい。リオ五輪は1万メートルで23年ぶりの世界新を出しながら、5000メートルは銅メダルと敗れた。中盤で一気にペースアップして独走に持ち込んだときは2冠確定と思われたが、終盤でペースダウンしたところをライバルのケニア2選手に抜き去られた。

 アヤナにとって1万メートルは今年6月に始めたばかりの種目であるのに対し、5000メートルは昨年の北京世界陸上で金メダルを獲得した種目。今季のダイヤモンドリーグでも2度世界記録に迫った実績もありながら、リオでは敗れてしまった。ショックが大きかったのか、レース後にはほとんどコメントを残していない。

 ブリュッセルでは銀メダルのヘレン・オビリ(26=ケニア)が雪辱の相手となるが、得意とする中盤からの独走パターンで逃げ切り、できれば世界記録も更新して実力ナンバーワンを示したいところだろう。

 本命と言われながらリオ五輪で敗れた選手たちにとって、ダイヤモンドリーグはリベンジの絶好の舞台となる。

 男子1500メートルでリオ五輪6位のアスベル・キプロプ(27=ケニア)や、男子走り高跳び銀メダルのムタス・エッサ・バルシム(25=カタール)、男子円盤投げ銀メダルのピョートル・マワホフスキー(33=ポーランド)らがその立場だが、残念ながらこの3種目はリオの金メダリストが出場しない。

 その点、女子砲丸投げは金メダルのミシェル・カーター(30=米国)が出場する。五輪3連覇を阻まれたヴァレリー・アダムズ(31=ニュージーランド)は、直接対決に勝ってダイヤモンドリーグ今季5勝目を挙げたい。

 男子3人とアヤナも含めた上記全員が、ダイヤモンドリーグの年間ポイントは優勝圏内にいる。ツアーチャンピオンを確保して意地を見せたい。

 日本からは男子走り高跳びに戸辺直人(24=安藤財団)が出場する。昨年の世界陸上代表で、ダイヤモンドリーグでも実績を残している選手。2年前のブリュッセル大会では2メートル31の自己タイで7位と健闘した。

 リオ五輪標準記録を昨年のうちにクリアしていたが、今季は故障の影響から日本選手権で6位と敗れ五輪代表入りを逃してしまった。相性の良いダイヤモンドリーグを復調のきっかけとしたい。

 ◆ダイヤモンドリーグはIAAF(国際陸上競技連盟)が主催する最高カテゴリーの競技会シリーズ。今季はドーハ大会を皮切りに9月のブリュッセル大会まで全14戦が開催される。各大会の種目別優勝賞金は1万ドル(2位6000ドル~8位1000ドル)。各種目は年間7大会で実施され、各大会のポイント(1位10点~6位1点)合計で争われる年間優勝者には4万ドルとダイヤモンド入りトロフィーが贈呈される。出場者はトップ選手に厳選され、ほとんどの種目が予選なしの一発決勝。緊張感あるレースが次々に行われる。また、オリンピックや世界陸上のように1国3人という出場人数の制限がない。ジャマイカ、アメリカ勢が揃う短距離種目や、アフリカ勢が多数出場する中・長距離種目などは、オリンピックや世界陸上よりも激しい戦いになる。