リオ五輪男子400メートルリレー銀メダルの山県亮太(24=セイコーホールディングス)が、日本歴代4位タイの10秒03で初優勝した。五輪後初レースは追い風0・4メートルの予選で10秒29、追い風0・5メートルの準決勝で10秒12。追い風0・5メートルの決勝はケンブリッジ飛鳥(23)との「銀メダリスト対決」となって、自己記録を0秒02更新した。6度目の10秒0台は桐生と並び日本人最多。次は今季最終戦の国体(10月7日開幕、岩手)で日本初の9秒台を狙う。

 もはや人間業ではない。山県が決勝でロケットスタートを決めた。号砲への反応速度は0秒107。ケンブリッジの前に出てそのまま加速して1メートル以上の差をつけた。正式タイムは、速報値10秒04から繰り上がって10秒03。「2度うれしいって感じです」。五輪準決勝の10秒05を超えて今季3度目の自己ベスト更新だ。

 号砲への反応速度は0秒100未満がフライング。人間が音を聞いてから反応するまで最短で0秒100かかるという医学的な根拠に基づく。山県の反応は人間の限界からわずか1000分の7秒。「耳で聞くのではなく、体全体で反応する」という。帰国後の1カ月で殺到した約60件の取材をこなした上で、五輪でも見せた切れ味を再現した。

 大会前日の22日にリオで知り合ったバドミントン「タカマツ」ペアの試合を観戦。冷静沈着な男が「シャトルが速い。それに反応してラケットの中心に当てる。人によっては股の下で打つ。あれはできないですよ!」と大興奮。他競技からも強い刺激を受けている。

 発奮材料もある。広島県出身でプロ野球広島の大ファン。25年ぶりのリーグ優勝に貢献した黒田と新井、そして五輪金の水泳金藤は県民栄誉賞を贈られた。リレー銀の山県は「僕は取れなかった…。やっぱりまだ足りんのかなと思った」としょんぼり。桐生と並ぶ自身6度目の10秒0台は、9秒台が秒読み段階に入ったことの証し。今季最終戦の国体で日本人初の快挙を達成すれば、県民栄誉賞は確実? だ。【益田一弘】