青学大のエース一色恭志(4年)がチームの危機を救い、初優勝に導いた。3区から早大にリードを許す苦しい展開。49秒差で迎えた最終8区。一色は6キロ手前で早大を逆転、一気に差を広げ、5時間15分15秒でゴールテープを切った。青学大は先月の出雲に続き、昨年2位と唯一不覚を取った今大会を制覇。来年1月の「箱根3連覇&大学駅伝3冠」へ弾みをつけた。東京五輪メダルの目標を掲げる一色は来年2月の東京マラソンに出場。来夏の世界選手権(ロンドン)代表権を目指す。

 早大・安井の背中は見えない。49秒、距離にして300メートル以上の差。絶体絶命の危機も、青学大エース一色の心は乱れない。「何が何でも抜いてやる」。序盤の6キロ手前で逆転。終盤は足がつる寸前も、気力で腕を振る。ゴールに飛び込む。昨年とは対照的な光景に「あの悔しさは味わいたくなかった」と安堵(あんど)した。

 優勝候補だった昨年は1区。東洋大の服部勇馬(現トヨタ)と同タイムも約1メートルの先着を許した。東洋大に優勝を許し、2位。ゴール後、チームメートに謝罪し涙するアンカー神野(現コニカミノルタ)の姿を目にした。東京に戻る特急の車内で原監督にアンカーを志願。神野に頼る気持ちがあった自分を許せなかった。

 高校時代から足の脛骨(けいこつ)を疲労骨折しても構わず走ってきた。エックス線撮影すると、医者から脛骨が一般的な太さの2倍あると言われた。「折れても走っていたから太くなった。ランナーは走ってケガはしない」。そんな鉄の意志があるから、箱根連覇、出雲連覇でも浮かれず、今大会に集中してきた。

 リベンジにも、満足感はない。苦戦したことは事実。「思うように走れなかった人がいた。甘くない」と自らとチームを戒めた。来年1月の箱根は3年連続でエース区間の2区を走る予定。この日のタイムではケニア人のニャイロ(山梨学院大)に1分以上の差をつけられた。「東京五輪を目指す以上は個人でもトップに立たないと。(箱根は)独走状態で勝ちたい」と続けた。

 箱根後の2月は今年日本人3位に入った東京マラソンに出場し、8月の世界選手権(ロンドン)代表を狙う。「身体能力が高い。スピード、スタミナもある。フォームも瀬古さんに似ているでしょ。瀬古さん以来のスーパースターになる」と原監督。頼もしいスーパーエースのいる青学大に死角はない。【田口潤】

 ◆一色恭志(いっしき・ただし)1994年(平6)6月5日、京都府生まれ。仙台育英高1年から全国高校駅伝で活躍。3年時に愛知・豊川高に転校。13年に青学大入学。1年時から3大駅伝にフル出場。2、3年時の箱根で2区を走り、連覇に貢献。15年ユニバーシアードのハーフマラソン銀メダル。今年2月の東京マラソンでは2時間11分45秒で日本人3位の11位。尊敬する人はオリックス糸井嘉男外野手。169センチ、55キロ。

 ◆大学駅伝3冠 10月の出雲、11月の全日本、翌年1月の箱根を制すること。90年度の大東大と00年度の順大、10年度の早大が達成している。青学大が来年1月の箱根で実現すれば、6年ぶり史上4校目。なお青学大が箱根3連覇となれば、04年駒大以来、13年ぶりになる。駒大は05年も制し、4連覇している。