市民ランナーの星、川内優輝(29=埼玉県庁)が“捨て身”の決断を下した。2日、福岡国際マラソン(4日、平和台陸上競技場発着)の会見に出席。先月12日に右ふくらはぎを痛め、状態は「半分以下。付け焼き刃でどこまでいけるか」と言いながらも、強行出場を決めた。

 今大会は、世界選手権(ロンドン)代表選考会の第1弾。しかし、世界への思いより、信念が先行した。家族や友人からも「辞退」を助言され、回避も考えたがいばらの道を選択した。

 川内 代表に選ばれることが目的か(選手として)戦うことが目的か。考えた時、戦うことを目標にやってきた。どんな調子でも全力を尽くすのが招待された責任。(どのレースに出るか)駆け引きの結果、選ばれるより、選ばれず、信念を貫き通した方がいい

 かつて実費でレースに出ていた市民ランナーは、11年の東京マラソンで初めて招待選手になった。全て用意されるありがたみを知った。感謝の思いから「招待されたレースは絶対受ける」が信条となり、過去に招待レースを欠場したことはない。日本代表として戦う最後の大会と位置付ける来夏の世界選手権の大事な選考でも「(欠場は)自分を否定する」と言った。

 ただ世界選手権への道は厳しくなる。選考は福岡国際、東京(来年2月)びわ湖毎日(同3月)の3大会。複数選考会に出場した場合、日本陸連設定記録2時間7分に到達しない限り、最初のレースが評価対象になる。川内の自己ベストは13年の2時間8分14秒だ。【上田悠太】

 ◆招待選手メモ 招待選手は参加費、移動費、宿泊費など費用がすべて主催者側から負担される。スタート位置も最前列。控室も軽食やドリンクが置かれた別室が用意され、レースに集中しやすい環境が整っている。