8月の世界選手権(ロンドン)の代表選考会を兼ねる東京マラソン(2月26日)の出場選手などが20日に発表され、ロンドン五輪5000メートル、1万メートル代表の佐藤悠基(30=日清食品グループ)がペースメーカー(PM)を務めることになった。日本を代表するランナーが、男子の今井正人(トヨタ自動車九州)下田裕太(青学大)ら招待選手らを先導する役目を担うのは極めて異例だ。

 サプライズといっていい。ロンドン五輪代表の佐藤が東京マラソンでPMを務める。中学、高校と数々の新記録を樹立。箱根駅伝では東海大1年の06年から箱根史上3人目となる3年連続区間新をマークし、4年時は3区(区間2位)で13人抜きで脚光を浴びた。日本を代表するランナーが異例の形で参戦する。

 足のけがから復活を目指している佐藤は「回復状況と練習計画の立案をする上で、内容とタイミングが合致したので、お受けしました。しっかりと役目を果たすべく準備をして、自らのマラソンにつないでいきたいと思います」とコメントした。

 主催者の東京マラソン財団の広報部は、佐藤がPMを務める経緯を「招待選手を探すと同時に、PMも探していました」と説明し「力がないとできない。役割が全うできる選手」として、6人のケニア人とともに数人の日本人候補者の中から唯一選んだ。

 東京マラソンは今年からタイム向上が期待できるコースに変わった。関係者によると、先頭集団を先導するPMの設定タイムを世界記録が狙える基準で検討をしている。海外招待選手の目玉、16年ベルリンで世界歴代4位タイの2時間3分13秒を出したキプサングは「高速コースになった東京で世界記録を狙う」と公言しているという。11年から日本選手権4連覇、12年ロンドン五輪でも5000メートルと1万メートルの代表とスピードある佐藤なら世界トップのランナーを先導できる。

 先導するのは先頭集団か第2集団かは未定。しかし常に光を浴びてきた男が、今回は陰から世界記録を支える立役者となる可能性もある。【上田悠太】

 ◆佐藤悠基(さとう・ゆうき)1986年(昭61)11月26日、静岡・清水町生まれ。清水南中で3000メートル中学新、長野・佐久長聖高では3000メートル、1万メートル高校新。箱根駅伝では1年時から3区、1区、7区、3区。09年に日清食品グループ入社。1万メートル自己ベストは歴代5位の27分38秒25。5000メートル自己記録は同5位の13分13秒60。11、13年世界選手権1万メートル代表。16年ロンドンマラソンは2時間12分14秒で自己ベスト。179センチ、60キロ。

 ◆国内マラソンのペースメーカー 一般的に、大きな実績はないが、力のあるランナーの予備軍らを海外から選ぶことが多い。マラソン専門ではないランナーが呼ばれることも。運営側の設定タイムで走ることなどで報奨金が出る。例年、東京マラソンでは30キロまで走る。海外では14年のロンドン・マラソンで「皇帝」ゲブレシラシエ(エチオピア)が務めた。