今日26日号砲の東京マラソンで国内では異例の世界最高シフトが敷かれた。レース前日の25日、都内でテクニカルミーティングが実施され、世界最高への挑戦を宣言している前世界記録保持者のウィルソン・キプサング(ケニア)ら先頭集団を30キロまで先導するペースメーカー(PM)の設定タイムが、国内レースでは過去最高の1キロ2分54~55秒に決定。公式記録上では81年福岡国際以来となる国内のマラソンレースでの世界記録誕生の夢が膨らんだ。

 フィニッシュの想定タイムは2時間2分22秒~3分4秒。もちろん、世界記録の2時間2分57秒の突破を狙っている。今大会から新コースに変わり、後半の坂が消え、平たんな高速コースになった。東京マラソン財団の早野レースディレクターは「ニュー東京。高速になったと示すには世界記録」と説明。東京五輪に向けて、選手が世界との差を感じることで「若手が挑戦してくれれば」と、低迷が続く日本勢への相乗効果も期待した。

 7人のPMのうちケニア人3人が先頭集団を先導する。PMはペースを安定させ、記録を伸ばすだけでなく、風よけにもなり、人数も多ければ、より空気抵抗を減らせる。世界記録突破に向けて国内レースでは異例のお膳立てとなる。

 他のPMは、国内レース最速記録(2時間5分18秒)を狙う第2集団、日本記録(2時間6分16秒)を目安に狙う第3集団を引っ張る。東海大時代に箱根駅伝で3年連続区間新をマークした12年ロンドン五輪1万メートル、5000メートル代表の佐藤は第3集団を先導する。【上田悠太】

 ◆81年福岡国際の世界最高 ロバート・ド・キャステラ(オーストラリア)が2時間8分18秒で優勝したが、その2カ月前のニューヨークシティーでアルベルト・サラザール(米国)が出した世界最高に5秒及ばなかった。だが、84年12月、米国陸連の調査により81年のニューヨークシティーの距離が150メートル短かったことが判明。サラザールの記録は抹消され、キャステラの記録は84年10月のシカゴでスティーブ・ジョーンズ(英国)が2時間8分5秒を出すまでの世界最高と公認された。これ以降、国内のマラソンで世界最高記録、世界記録は出ていない。